研究課題/領域番号 |
20K22611
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
松本 翔馬 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 特任助教 (00881517)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / CRISPR/Cas9 / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
前年度までに実施したマウス凍結胚を用いた予備実験から、青色LEDをマウス受精卵に照射しても胚盤胞発生率に影響しないことが明らかになっていた。また青色LEDを8時間照射した胚盤胞をマウス子宮内に移植した結果、胎仔が得られることも確認されていた。昨年度は主に、paCas9を高効率でマウス受精卵に導入するため、piggyBacトランスポザーゼ(mPB)を利用可能なベクターへの組換えを行っていたが、paCas9配列は5kbpと長大な配列であるため、1度の組換えではmPBベクターへと組換えることができず、ベクターの作製に想定より長い時間を要してしまった。しかし昨年度内にpaCas9発現ユニットをmPBベクターへと組み替えることに成功し、現在マウス受精卵を用いたノックアウト実験を行っている。さらに、より早期にpaCas9タンパク質をマウス受精卵に供給するため、paCas9をin vitro transcription用ベクターに搭載させた新規プラスミドも構築し、paCas9 mRNAを人工合成することにも成功した。合成したpaCas9 mRNAおよび標的配列のsgRNAをマウス受精卵へインジェクションし、得られた胚からゲノムDNAを抽出、サンガーシークエンスにより標的配列の確認を行ったところ、標的領域におけるゲノム編集は確認されなかった。この結果を受け、青色LEDの照射条件を複数準備し、至適条件を決定する現在実施している。さらに、作製したプラスミドの機能評価のため、より簡便なマウスES細胞を用いたノックアウトおよびノックイン実験も並行して実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
paCas9プラスミドのマウス胚性幹細胞(ES細胞)への導入効率が低かったため、前年度よりpiggyBacトランスポザーゼ(mPB)での導入が可能なプラスミドを再構築していたが、paCas9タンパク質が約5kbpからなる長大な配列であったため、mPBプラスミドへの組み替えが難航してしまった。しかし、前年度に構築方法の改変、使用する酵素や複数回におよぶ菌体の種類の変更により指摘条件を見出し、paCas9発現ユニットをmPBベクターに載せ替えることに成功した。加えてpaCas9配列をin vitro transcription用のベクターにも組み替え、現在はより早期での活性が予想されるpaCas9 mRNAをマウス受精卵へと導入し、指摘条件の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは新たに作製したpaCas9 mPBベクターを用いることでmES細胞へとpaCas9および標的となるsgRNAを導入し、当研究室環境下での青色LED至適照射条件の検討を行う。培養細胞でノックアウト、ノックインが可能であることを確認した後、in vitro transcriptionにより合成したpaCas9、sgRNAを顕微受精(ICSI)後10時間のマウス1細胞期胚へと注入する。マウスES細胞とマウス受精卵では青色LEDの至適照射条件が異なる可能性を考慮し、マウスES細胞で同定した指摘条件を中心に数パターン条件を定め、まずはノックインに比べ誘導効率の高いノックアウトを行う。最も効率的にノックアウト可能なLED照射条件を同定した後、GFPドナーベクターの標的配列へのノックインを実施する。胚盤胞期まで発生し、導入したGFPの蛍光が確認できた胚に関しては子宮内移植の後出産させ、産子作出効率を産出する。paCas9を用いた高効率遺伝子改変動物作出法が確立された後、ノックダウンベクターを構築し、同定した光量、照射時間でのノックダウン実験へと移行する。ICSI10時間後からのノックインにより遺伝子改変動物作出効率が改善されない場合、青色LEDを照射するタイミングを1細胞期のS/G2期から2細胞期のG2期へと変更し、同様に胚盤胞発生率、産子作出効率を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
paCas9ベクターのpiggyBacベクターへの載せ換えが困難を極めたことが研究計画に遅れが出ていることの大きな理由の1つである。そのため、マウス受精卵を用いた実験やシークエンスなどといった分子生物学的実験を開始したばかりであり、本年度中にマウスES細胞を用いて新たに作製したpaCas9ベクターの活性評価および青色LED至適照射条件の同定を行う。さらにマウス受精卵を用いたTg胚の作製および移植を実施する予定であるので、昨年度使用に至らなかった予算はマウスの購入にも使用する。また、学会での研究成果の発表、学術論文への投稿も行う予定である。
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