最終年度(2021年度)ではマウス造血幹細胞(HSC)の老化によるヒストン修飾変化を解析した。初年度に確立した従来の1/1000の細胞数での解析を可能にする新規・高感度エピジェネティック解析法をもちいて、若齢・老齢マウスから分離した造血幹細胞の活性型および抑制型ヒストン修飾およびクロマチン高次構造調節因子の局在をゲノムワイドに解析した。 その結果として、リンパ球の分化抑制・骨髄球への分化亢進・造血幹細胞数の増加などのHSC老化の特徴と関連する遺伝子のプロモーター・エンハンサーにおいてヒストン修飾状態の変化が検出された。さらにモチーフ解析・遺伝子発現解析の結果の詳細な比較から、若齢HSCでbasalレベルに発現する分化関連転写因子が老化にともない発現低下し、領域特異的なエピジェネティック変化を引き起こしている可能性が示唆された。 以上により、本研究では当初の目的である(1)稀少細胞のヒストン修飾状態を解析する新規解析法の確立、(2)従来はとらえられなかったHSC老化によるエピジェネティック変化の解明、(3)全身の炎症性老化予防のための潜在的ターゲットとなるエピジェネティック変化の誘導因子の探索を達成した。本研究の成果は研究代表者による発展的な研究課題提案・遂行にむすびついており、今後は同定されたエピジェネティック変化の候補誘導因子について更なる解析を進め、幹細胞老化抑止の実現をめざす。
|