発光魚キンメモドキParapriacanthus ransonnetiは、トガリウミホタルCypridina noctilucaのルシフェラーゼタンパク質を発光器に取り込むが、その動態は不明である。また、免疫組織化学による染色像より発光細胞の細胞質にルシフェラーゼが存在することから、膜介在性の取り込み機構などによりルシフェラーゼが取り込まれていると予想される。すなわち、膜に局在するトガリウミホタルルシフェラーゼ受容体の存在を想定して、これを同定することを目指す。 新型コロナウィルス感染症の流行のため、研究が断続的に中断されてしまい、また、協力関係にあった水族館も閉館に至ったため、生体サンプルの供給に大きな問題が生じた。そのため、飼育実験を精力的に行うことが不可能であった。 前年度に作成したリコンビナントトガリウミホタルルシフェラーゼをキンメモドキに投与したところ、投与後1日から3日では発光器でのルシフェラーゼ活性の取り込みを検出することができた。しかしながら、ウェスタンブロットや質量分析法によりこれらのサンプルからリコンビナントトガリウミホタルルシフェラーゼの検出を試みたが、検出できなかった。これらの結果は取り込みには十分な時間が必要であることを示唆している。さらなる実験を行うため、生体サンプルのあらたな供給経路を模索した結果、某水族館との協力関係を結ぶことができた。これにより、長期間の飼育実験が可能となった。これまでの研究から、ウミホタルVargula hilgendorfii の2週間にわたる投与で、ウミホタルルシフェラーゼの発光器における取り込みは確認されている。今後は、実験期間を1週間に設定して投与実験を行うことで、ルシフェラーゼタンパク質の取込みを見出し、タンパク質共沈降法により、相互作用タンパク質の同定を目指す。
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