研究課題/領域番号 |
20K22643
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
水谷 雅希 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 産総研特別研究員 (60886274)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | マイコプラズマ / ゲノムクローニング / 合成細菌 |
研究実績の概要 |
淡水魚の病原性細菌であるMycoplasma mobileは、寄生に特化するために進化の過程において宿主免疫に認識されやすいペプチドグリカン細胞壁とべん毛を失ったことで、新奇な滑走運動を獲得した。この極めてユニークな滑走運動マシナリーの全容解明には、標的遺伝子の欠損株作製が必須であるが、Mycoplasma mobileでは遺伝子ノックアウトが不可能なため、欠損株を用いた解析が非常に困難という大きな問題を抱えている。この問題を解決する新たなアプローチとして、本研究では、Mycoplasma mobileの全ゲノムを酵母内にクローニングし、それをマイコプラズマを基に創られた合成細菌に導入することで、滑走運動を合成細菌で再現し、また、酵母の遺伝子操作技術をクローニングゲノムに用いることで、滑走運動の変異株作製とその機能解析から滑走運動マシナリーの解明を目指す。 初年度である本年度は、主に酵母でのゲノムクローニングを行った。培養したMycoplasma mobile菌体をアガロースプラグに封入し、タンパク質分解酵素と界面活性剤処理によってゲノムDNAを露出させた後、制限酵素処理を行った。次にこのゲノムDNAを合成細菌への導入を可能にするvectorと共にスフェロプラスト化した出芽酵母に導入し、transformation associated recombination (TAR)法を用いて、酵母内にyeast artificial chromosome (YAC)として クローニングした。この形質転換体酵母をマルチプレックスPCRと次世代シーケンサーによって解析し、Mycoplasma mobile全ゲノムがクローニングされていることを確認した。また、合成細菌へのゲノム移植についても取り組み始めており、ゲノムの一部を導入することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノムクローニングを完了し、ゲノム移植のフェーズに移ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はゲノム移植をメインに行っていく。ゲノムの一部の導入には成功したものの、全長の導入にはまだ至っていない。合成細菌の種類の選定、レシピエント細胞の培養状態の検討、導入ゲノムの精製度の検討が課題であると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、コロナウイルス蔓延により学会等の中止や、オンライン化により旅費がかからなくなったこと、また参加費の減額があったため。 次年度の消耗品費として使用する計画である。
|