マイコプラズマ属細菌は動物の寄生菌であり,いくつかの種において,宿主表面に結合したまま移動する滑走運動を示すことが報告されている。本研究は,滑走運動遺伝子群をクローニングし,合成細菌JCVI-syn3.0Bに導入することで,滑走運動の再構築を目的としたものである。 まず初めに,マイコプラズマ・モービレ全ゲノムのクローニングゲノム(約780 kb)を合成細菌に導入する形質転換実験を試みたが,導入ゲノムサイズが大きすぎるせいか,コロニーが得られなかった。そこでゲノム中の滑走運動に関わるとされる6オペロンのみをクローニングするために,RA-RCR法によるアセンブルを試みた。PCRで各オペロンを増幅し,ゲル切精製後,等モル比になるように混ぜ,RA-RCR反応を行ったが,目的のアセンブル産物は得られなかった。同様にGibson assemblyによるアセンブルも試みたが,目的のアセンブル産物は得られなかった。そこで,酵母Transformation-associated recombination(TAR)法によるアセンブルを試みた。PCRで各オペロンを増幅し,等モル比(0.017 pmol/fragment)になるように混ぜ,スフェロプラスト化処理を行った出芽酵母に導入したところ,1枚の寒天プレートから数百個のコロニーが得られた。ここから32コロニーを取得し,6オペロンの5つの繋ぎ目を標的としたジャンクションPCRを行ったところ,9つのコロニーですべての標的バンドが検出され,約3割の比較的高い効率で6オペロンをタンデムにアセンブルした目的の産物が得られた(約58 kb)。これを合成細菌に導入するための形質転換実験を現在進めている。
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