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2020 年度 実施状況報告書

植物の形態多様性を担うE3ユビキチンリガーゼの分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K22644
研究機関東北大学

研究代表者

別所 奏子 (別所・上原奏子)  東北大学, 生命科学研究科, 助教 (90876624)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2022-03-31
キーワードE3ユビキチンリガーゼ / 植物 / 形態形成
研究実績の概要

本研究ではシロイヌナズナのRING型E3ユビキチンリガーゼであるATL43の相互作用因子を同定し、ATL43を起点とした形態形成の分子機構の解明を目指している。同時にイネのATL43オーソログ遺伝子であるRAE3についても解析を行い、異なる植物種におけるオーソログ遺伝子が同一の相互作用因子との結合およびその分解により異なる器官の形態形成を担っているのかについて検証を行う。
本年度は、イネRAE3(WT)過剰発現体 (RAE3ox)およびRAE3の持つRINGドメインに変異を導入し不活性型としたRAE3(C136S)過剰発現体 (mRAE3ox)の作出を行い、RAE3oxではイネ種子における芒伸長が観察されるのに対し、mRAE3oxでは芒伸長が観察されないことを確認した。以前の我々の研究により、酵母においてmRAE3は機能を失っていることが示されていたが、本結果はmRAE3が植物体内でも機能を発揮できないことを示している。また、RAE3(WT)-TurboIDおよびRAE3(C163S)-TurboID形質転換イネの作出を試み(現在T0再分化中)、次年度に解析するための準備を行なっている。
また、シロイヌナズナATL43の相互作用因子を探るため、T2種子を用いたLC-MS/MS解析結果の統計解析を行った。その結果、Ca2+依存性リン酸化酵素CIPK9がATL43と相互作用する因子として有意に検出された。先行研究において CIPK7/12/14がATL31を直接のリン酸化ターゲットとし、ATL31の基質タンパク質との結合を促進していることが示されている(Yasuda et al. 2017)。この結果から、本研究において同定されたCIPK9がATL43をリン酸化し、ATL43とその基質との結合を促進している可能性が考えられる。本結果を踏まえて次年度は反復結果を得るための解析を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

RAE3oxおよびmRAE3oxの解析により、変異型RAE3は植物体内で機能欠損していることを示すことができた。すなわちこの変異はRAE3のE3ユビキチンリガーゼとしての機能喪失に十分であり、TurboIDを用いた相互作用因子の網羅的探索に有効と言える。RAE3(WT)-TurboIDとRAE3(C136S)-TurboIDの形質転換体を作出し、LC-MS/MSにより検出される相互作用因子を比較することによって真の相互作用因子の絞り込みが迅速に行うことができる。本年度はこれら2つのTurboID形質転換体を作出し、次年度以降の解析の準備を行うことができた。
しかし新型コロナウイルスによる影響で米国からの荷物の輸入が禁止されていたため、前年度まで所属していた機関(Carnegie Institution, アメリカ)からの種子の輸送が大幅に遅れ本年度の11月に種子を入手することとなったため、シロイヌナズナ種子を用いた反復解析を行うことができなかった。また12月から産前休に入ったため、本年度後半の解析については中止した。

今後の研究の推進方策

シロイヌナズナT2種子を用いた、ATL43の相互作用因子の反復データの取得をまず行う。具体的にはATL43-TurboID形質転換体T2種子およびatl43変異体の電子顕微鏡下での観察、フローサイトメーターを用いた核相プロファイルの解析、およびLC-MS/MSを用いた相互作用因子候補の取得を行う。またイネ形質転換体の取得には時間がかかるため、こちらも並行して進める。しかし産休育休期間をはさむため、解析に使用できる系統の取得には至らない可能性がある。そこで、別の手法としてSTRINGやBioGRID、および昨年オープンとなったPlaPPIといったタンパク質-タンパク質相互作用データベースを駆使し、RAE3の相互作用因子候補を抽出する。最終的にシロイヌナズナの相互作用因子候補とイネの相互作用因子候補を重ね合わせ、最有力候補を抽出する。その後、酵母内においてATL43および候補遺伝子を発現させ、Yeast two hybrid法による相互作用の検証、および、両方の遺伝子のリコンビナントタンパク質を用いたin vitro実験系により相互作用の検証を行う。

次年度使用額が生じた理由

2020年12月末から産休および育休に入り、2021年1月~3月における科研費使用を中止したため次年度使用額が生じた。
繰り越した額については、2021年10月(育休復帰以降)から使用する予定であり、実体顕微鏡の購入や東北大学共通機器であるLC-MS/MSおよびSEMの利用代金に充てる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [国際共同研究] Carnegie Institution(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Carnegie Institution
  • [雑誌論文] Exploring the Loci Responsible for Awn Development in Rice through Comparative Analysis of All AA Genome Species2021

    • 著者名/発表者名
      Kanako Bessho-Uehara, Yoshiyuki Yamagata, Tomonori Takashi, Takashi Makino, Hideshi Yasui, Atsushi Yoshimura and Motoyuki Ashikari
    • 雑誌名

      Plants

      巻: 4 ページ: 725-

    • DOI

      10.3390/plants10040725

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Spatiotemporal gibberellin biosynthesis underlying the optimal rhizome development in Oryza longistaminata2021

    • 著者名/発表者名
      別所-上原 奏子
    • 学会等名
      第62回日本植物生理学会
  • [学会発表] アフリカイネ栽培化過程で選抜された芒伸長遺伝子RAE3の同定と機能解析2020

    • 著者名/発表者名
      別所-上原 奏子
    • 学会等名
      第84回日本植物学会
  • [学会発表] イネ栽培化過程で選抜された芒伸長遺伝子RAEsに関する機能解析2020

    • 著者名/発表者名
      別所-上原 奏子
    • 学会等名
      第10回東北植物学会

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公開日: 2021-12-27  

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