研究課題
褐色脂肪組織はグルコース、脂肪酸に加えて分岐鎖アミノ酸(BCAA)を活発に消費して熱産生を行う。我々は過去の研究において、褐色脂肪組織の熱産生機能に不可欠な新規ミトコンドリアBCAAトランスポーターとしてSLC25A44を同定した。しかし、このトランスポーターの生理的意義とそのメカニズムの解明はほとんど進んでいない。本研究では、SLC25A44がインスリン感受性に及ぼす影響とその分子基盤を解明することを目的とする。これまで、SLC25A44欠損マウスを高脂肪食で飼育すると、褐色脂肪組織の機能の障害と血中BCAA濃度の上昇が認められることなどを明らかにした。このマウスの糖代謝を評価したところ、野生型に比べて強い耐糖能異常とインスリン抵抗性が認められた。しかしこのとき、体重の有意な増加は認められなかった。培養ヒト褐色脂肪細胞にMBCを強制発現させると、ノルエピネフリン誘導性のエネルギー消費量が減少した。また、培養細胞におけるメタボロミクスを用いたBCAAの代謝運命解析により、BCAAはSLC25A44を介して分解されるとインスリン感受性に関与する代謝産物の合成に寄与する可能性が認められたため、ヒトの血清サンプルの代謝物濃度を測定した。その結果、寒冷刺激によりこの代謝物の血中レベルが上昇すること、この上昇量と陽電子画像診断法(FDG-PET/CT)で調べた褐色脂肪活性が正相関することなどを見出した。これらの結果から、褐色脂肪組織において代謝分解されたBCAAはTCA中間体として熱産生に寄与するだけでなく、インスリン感受性調整性の代謝産物の合成に寄与することにより、エネルギー消費依存的、また非依存的に全身性耐糖能とインスリン感受性を制御することが示唆された。
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