研究課題/領域番号 |
20K22650
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
藤井 一希 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (10881609)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 短鎖ペプチド / PKA / AKAP / 神経科学 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
近年のゲノム情報の読み取り技術の革新的な進歩により、今まで見逃されてきたり全長 100 アミノ酸以下の短いペプチドをコードしうる多数の Open reading frame (ORF) の存在が報告されている。本研究では、新規に発見された中枢神経系限局的に発現する短鎖ペプチドであるA-kinase anchor protein inhibitor 1 (Akain1) 遺伝子に着目し、その高次脳機能における役割を明らかにすることを目的としている。 Akain1 は培養細胞系において、プロテインキナーゼA (PKA) の細胞内局在を打ち消すことから、内在性唯一の“負の PKA シグナル制御因子”と考えられるがその生理的意義は不明であった。脳機能におけるAkain1の役割を探索すべく、独自に作製したAkain1 欠損マウスを用いて複数の行動試験を組み合わせた網羅的行動テストバッテリーを実施したところ、いくつかの行動表現型に異常が見られ、Akain1 が脳機能において重要な役割をもつことが示唆された。そこで、Akain1 の脳内での発現様式を明らかにすべく、Akain1 ペプチド領域にエピトープタグ配列をノックイン (KI) したマウスを作製した。Akain1 タグノックインマウスの脳サンプルでウエスタンブロットを行った所、ノックインマウスにおいて特異的なシグナルを検出することに成功した。現在、タグシグナルでの免疫染色によって、Akain1 の発現脳部位・細胞種を特定する実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Akain1 抗体の作製を試みたが、短鎖ゆえ抗原部位が限定的であり免疫組織化学染色で使用可能な抗体の作製に至っていない。そこで、Akain1 遺伝子領域にエピトープタグを挿入したマウスを作製することで、内在性のAkain1 の存在を生体内ペプチドレベルで検出することに成功した。このマウスを活用し、Akain1 の発現様式や、相互作用をする分子の同定が進めていくことができると考えられる。以上の理由より、おおむね予定通りに進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
作製した Akain1 欠損マウスとタグノックインマウスを用いて、Akain1 の発現部位・細胞種を明らかにするともに、それらが行動表現型にどのように関与するのかを明らかにする。また、Akain1 の欠損により生じる脳内のPKA を介したシグナルの変化を解析する。また、生体内でAkain1 と相互作用する分子に関しても探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究報告・打ち合わせに使用する予定であった旅費については、昨今の新型コロナ感染症によって出張ではなく、リモートな会議・打ち合わせが増えたため未使用額が生じた。 また、使用するマウスの作製が間に合わなかったため、質量分析などの解析が行えなかった。これらの実験については次年度に行うこととしたい。
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