研究課題/領域番号 |
20K22655
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
苅田 聡 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50883526)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | ゴルジ体 / 糖鎖修飾 / 形態学 |
研究実績の概要 |
ゴルジ体は多彩な糖鎖修飾を行う細胞内小器官であるが、ゴルジ体内における糖鎖修飾の種類と分布の関係性、および制御機構については明らかとなっていない。本研究ではそのような糖鎖修飾ゾーンの存在を検証することを目的として解析を行う。これまでの解析で以下の結果を得た。 1)ゴルジ体の糖鎖修飾ゾーンの存在を解析するために、ヒト結腸がん由来細胞株Caco2細胞においてタグ標識されたGalnt6(O型糖鎖), GnT1(N型糖鎖), XYLT2(プロテオグリカン)のゴルジ体内の局在を電子線トモグラフィーによって解析した。その結果、MGAT1とGALNT6はmedial-golgi槽に分布し、XYLT2はcis-golgi槽に分布するように見られ、それぞれの酵素がゴルジ体内でそれぞれ異なる分布を示すことを示唆する結果を得た。また、超解像顕微鏡技術であるSCLIMによる観察によって、XYLT2はNocodazole処理したゴルジ体ミニスタックの辺縁部ではなく中心部に局在することを確認した。 2)糖鎖修飾酵素の分布を制御する因子の探索を行うために、ゲノム編集技術を用いてCaco2細胞にて上記糖転移酵素にAPEX2を付加した融合タンパク質を発現する細胞株を樹立した。その細胞株を用いて近傍依存性標識法と質量分析法を組み合わせた方法により、上記糖鎖修飾酵素の近傍に位置するタンパク質を複数同定した。これらのタンパク質に積荷タンパク質の選別に関わる遺伝子が同定されており、これらが糖鎖修飾酵素の分布を制御している可能性がある。今後、同定された遺伝子が糖転移酵素の局在を制御するかについて検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)ゴルジ体の電子線トモグラフィーによるモデリングはGALNT6, XYLT2, GnT1においていくつか完了しており、おおむね順調に進んでいる。一方で、SCLIMについては東京への出張を伴うため緊急事態宣言などで予定が立たず解析が遅延している。 2)ゲノム編集技術を用いてCaco2細胞にて上記糖転移酵素にAPEX2を付加した融合タンパク質を発現する細胞株を樹立した。その細胞株を用いて近傍依存性標識法と質量分析法を組み合わせた方法により、上記糖鎖修飾酵素の近傍に位置するタンパク質を複数同定した。糖転移酵素の周辺因子の同定についてはおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)引き続き電子線トモグラフィーによるモデリングを行い、ゴルジ体の構造的特徴と糖転移酵素の分布に関連性が見えるか検討を行う。また、SCLIMを用いた解析によって、電子線トモグラフィーで得られた分布の確認を行う。 2)近傍依存性標識法によって同定されたタンパク質から糖転移酵素の分布を制御する候補因子を選択すべく、糖転移酵素との結合の有無を検討する。得られた候補因子において、ノックダウンなどによる抑制条件下における糖転移酵素の分布を上記観察方法により評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症などによる実験計画の遅延により次年度使用額が生じた。
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