本解析で用いるヒト標本採取については、山口大学大学院・医学系研究科・消化器・腫瘍外科学講座から提供を受け、現在までに30検体の大腸癌標本(がん部、非がん部を含む)がすでに得られている。また、多重染色法である Akoya Science社のCODEX法について予備検討を行なった。試料としては、マウス慢性炎症系モデルマウスを用いて各バーコード標識抗体の最適化条件検討を行なった。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)投与によりマウス 大腸に慢性炎症を引き起こし、発癌させるモデル系がすでに確立している。蛍光抗体染色法により、炎症領域においてYAP陽性細胞の増加が観察され、YAP活性化細胞であるといえる。次に、このマウス炎症・発癌系を用いてCODEX法で使用する免疫細胞マーカーである各種抗体の条件検討を行なった。結果、14種類の抗体の検出に成功し、マウス大腸炎症領域を含む切片上で各抗体の数値化・定量化することにも成功した。また、CODEX法による位置情報を保持した状況で多次元データ解析を遂行できる基盤を構築した。今後、蓄積したヒト大腸癌標本を網羅的に解析することで、がん発症、進展過程における微小環境下での一見 無秩序に混在するがん細胞群と自己免疫細胞群との空間的分布を数細胞レベルの隣接相 関関係に法則性を見出すことができる解像度を持つ解析手法であると判断できる。本CODEX機材は昨年度2月に山口大学医学部に搬入済であり、本格的なヒト大腸癌標本を用いた解析に着手している。合わせて、本スタートアップ資金により多点同時力学測定技術 magnetic tweezers法の導入・セットアップおよび YAPレポーターマウスの作成も本研究室で進行中であることを明記しておく。
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