研究課題/領域番号 |
20K22661
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
溝上 祐介 東京薬科大学, 生命科学部, 嘱託助教 (60756443)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 光合成 / 気孔コンダクタンス / 葉肉コンダクタンス / 通水コンダクタンス / アクアポリン |
研究実績の概要 |
陸上植物は葉からの水の流出(蒸散)と葉への水の供給のバランスを適切に制御し,同時に光合成の基質であるCO2を取り込まなくてはならない。本研究では葉において水とCO2の拡散経路に共通項があることに注目し,蒸散速度が高い環境においてCO2拡散コンダクタンスである,気孔コンダクタンス(gs),葉肉コンダクタンス(gm),また葉の通水コンダクタンスであるKleafがどのように制御されているかを検証した。またgs,gm,Kleaf の変化要因であるH2O/CO2透過性アクアポリンが水とCO2のフラックス制御にどのように関与しているか検討した。 1) gs,gm,Kleafの関係を明確にするために,同一の葉で測定するシステムをガス交換測定器,クロロフィル蛍光測定器,サイクロメーターを用いて確立し、ガス交換測定によって光合成速度とgsを測定し,クロロフィル測定器による同時測定からgmを算出した。また測定直後の葉の水ポテンシャルを測定することでKleafを求めた。クロロフィル蛍光測定によるgm測定精度には改善の余地がある。2)蒸散要求量が異なる条件においてgs, gmとKleafが短期的にどのように制御されているかをシロイヌナズナで検証した。蒸散要求量にともなう蒸散速度の変化とともに,Kleafも同調して変化した。またC3光合成型とC4光合成型のフラベリアを用いて検証したところ,蒸散速度,Kleaf,gmの同調した変化が見られた。3)コンダクタンスへのH2O/CO2透過性アクアポリン(PIP)の関与を検証した。葉肉組織発現型,維管束組織発現型それぞれのPIP欠損株の蒸散要求量が異なる条件へのコンダクタンスの応答を測定したところ,gsに差が見られたが, gm,Kleafに差はなかった。維管束組織発現型のPIPがgsの制御にも関わることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった、コンダクタンスの同時測定系の確立はできたが、葉の小さいシロイヌナズナのgm測定精度には改善の余地がある。今後は他の測定方法を併用する予定のため、進捗状況に若干の遅れが出ている。その他においては概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はコンダクタンスの蒸散要求量が異なる条件への短期応答のみならず、長期応答の解析をシロイヌナズナ、シロイヌナズナPIP変異体、C3/C4フラベリアを用いて遂行する。同時に葉の形態的変化についても解析する予定である。さらに、シロイヌナズナPIP変異体を用いた研究では、発現解析などの分子生物学的解析も進める予定である。これらを解析することで、蒸散と葉への水の供給のバランスを適切に制御し、同時に光合成の基質であるCO2を取り込むための、CO2/H2Oコンダクタンスのバランスを制御する機能を包括的に理解する。 シロイヌナズナにおけるgmの測定精度を補完するために、カーブフィッティング法や炭素安定同位体法などの手法も用いる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の見積もりよりも実験機器(サイクロメーター、サーモグラフカメラ )が安価に購入できたこと、参加学会がリモート開催になったことなどにより、次年度使用額が生じた。次年度には当初予定していなかった実験を行うため(理由は「今後の研究の推進方策」を参照のこと)、主にそのセットアップにかかる費用と、消耗品にあてる予定である。
|