研究課題/領域番号 |
20K22664
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
貴嶋 紗久 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 博士研究員 (90879941)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞骨格 / 細胞壁 / アクチン / 微小管 / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
植物細胞を覆う細胞壁は、細胞の形態形成において重要な役割を担う。細胞壁の形成において微小管はセルロース合成酵素の足場として機能する。一方、別の細胞骨格であるアクチン繊維は細胞壁形成に関与することが薬理学的・遺伝学的な解析から示唆されている。しかし、アクチン分子が細胞壁形成にどのように関与しているのかはよくわかっていない。 本年度は、まずアクチンの遺伝子欠損株を用いて道管の細胞壁パターンを根および胚軸を用いた分化誘導系で詳細に解析した。根においてアクチン遺伝子欠損株では道管の途切れや壁孔の形にばらつきが見られた。一方、胚軸の分化誘導系では不均一な壁孔パターンの配置やサイズのばらつき、顕著に小さい壁孔が形成された。ファロイジンを用いてアクチン遺伝子欠損株の根のアクチン繊維を観察したところ、野生株に比べて中心柱のアクチン繊維の量が顕著に減少している様子が観察された。これらの結果から、アクチン繊維の減少が正常な細胞壁パターンを形成させるための微小管あるいはその制御機構に影響を与えていることが示唆される。 次に、根や道管に分化させた胚軸で細胞骨格タンパク質マーカーを発現している野生株の観察を行った。アクチン繊維は道管の分化に伴って縦方向のケーブルの束化が顕著になり、さらに壁孔縁と壁孔内部にアクチンが集積する様子が観察された。壁孔縁のアクチンは先行研究で報告された壁孔縁の細胞壁沈着の促進に寄与しているものと考えられる。一方、微小管は壁孔以外の領域に横方向に分布し、道管の分化に伴って壁孔縁周辺への局在が観察された。従って、アクチン繊維と微小管の相互作用は分化後期の壁孔縁の形成で協同して働いている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクチン変異株の道管の表現型を根と分化誘導系を用いて詳細に解析を進めることができた。また、道管の細胞骨格のイメージングやコンストラクトの作成等おおむね計画通り進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
アクチン変異株について細胞骨格マーカー発現株の樹立を進めており、作成次第観察を行う。また、アクチンアイソフォーム間で道管パターンへの影響の程度に差が見られたことから、補完実験によりアイソフォーム特異性について検証を行う予定である。野生株を用いてアクチン繊維と微小管の2つのマーカーを共発現している植物体の樹立も進めており、道管分化時のアクチン繊維と微小管の両者の時空間的な相互作用の理解を目指す。蛍光タンパク質融合アクチンを用いた免疫沈降実験を計画していたが、植物成長に影響を与えることがわかったため、まず免疫沈降が可能な小さなタグを融合し、ノックアウトラインを補完することのできるアクチンの修飾方法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は参加予定の学会がパンデミックの影響でオンライン開催となったことから次年度使用額が生じた。 次年度で、実験試薬やピペッター等の実験機器の購入に使用する予定である。
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