本研究では、細胞壁形成のモデルとして道管に着目し、細胞壁形成におけるアクチンおよびアクチン-微小管相互作用の役割を明らかにすることを目的とした。アクチンの機能についてはアクチン遺伝子欠損株を用いた解析を行った。アクチン遺伝子欠損株の根の道管では途切れや壁孔の形にばらつきが見られた。詳細な観察を行うために胚軸で異所的に道管を形成する系を用いた。この系においてもアクチン遺伝子欠損株では不規則な形の壁孔が形成された。アクチンまたは微小管のマーカーを道管特異的にアクチン遺伝子欠損株でそれぞれ発現させ、胚軸の系を用いて観察することによって、縦のアクチンケーブルや壁孔内に局在するアクチンの減少が観察され、一方、微小管は一部で細胞壁の沈着していない領域に局在が見られた。 蛍光タンパク質融合アクチンを用いた解析を計画していたが、植物成長に影響を与えてしまったため、アクチン変異株の表現型を補完できるアクチンの修飾方法の確立を目指した。数アミノ酸からなるペプチドタグを数種類アクチンに融合し、根毛形成阻害を生じるアクチン変異株の表現型の補完を試みた結果、いくつかのタグで補完に成功した。さらに、細胞を固定した後、蛍光抗体染色法でアクチン繊維を観察することができた。本研究で開発した機能的なアクチン修飾法はイメージングに加え、免疫沈降にも利用することができる。 アクチンー微小管相互作用についてはアクチンマーカーと微小管マーカーを両方同時に道管特異的に発現させた野生株を用いて、薬剤処理後のアクチン繊維、微小管の様子を観察した。前述した胚軸の道管分化誘導系を用いて、アクチンの重合阻害剤が分化初期の微小管配向に影響を与える様子や、微小管の重合阻害剤が縦方向のアクチンケーブルの形成に影響を与える様子が観察された。これによって、アクチン-微小管の分化に伴った配向変化時の相互作用が示唆された。
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