研究課題/領域番号 |
20K22666
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古川 沙央里 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (10877319)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 送粉共生 / ハナホソガ属 / 虫こぶ / コマユバチ科 / 寄生蜂 |
研究実績の概要 |
申請者らは、コミカンソウ科植物とそれらの花に送粉・産卵するガ類(ハナホソガ属, Epicephala)との送粉共生関係で、共生者から派生したと考えられる寄生的なハナホソガ種(Epicephala corruptrix)を見出した。この、E. corruptrixは虫こぶ形成性を持ち、宿主の種子生産を著しく低下させる。一方、寄生蜂による寄生率は共生者より低い。本研究では、寄生的送粉者であるハナホソガ種(E. corruptrix)が寄生蜂からの防衛のために虫こぶ形成性を進化させたことで寄生的になり、宿主を共有する共生的送粉者E. obovatellaを絶滅させながら分布を広げていると仮説を立て、飼育系を用いた操作実験とハナホソガ2種の遺伝的変異の地理的パターンにより検証する。本年度は、ハナホソガ2種の累代飼育系の確立を目指した。確立した累代飼育系を用いて操作実験を行い、ハナホソガ2種間で、産卵する花の発達段階、発達過程、大きさ、産卵数にどのような違いがあるかを明らかにすることを目指した。 まず、和歌山県にて、共生的送粉者E. obovatellaとその宿主カンコノキの採集を行い、累代飼育系の確立を試みた。後述する理由により、寄生的送粉者E. corruptrixの生息地での調査を実施できなかったため、産卵にかかわる形質・現象についての2種間比較までに至っていない。その代わり、当初次年度に予定していたハナホソガ2種とその寄生蜂コマユバチの遺伝的多様性を比較するための、分子実験をすでに手元にあるサンプルについて前倒しして実施した。その結果、ハナホソガ2種について約40個体の遺伝情報を得た。本実験は、次年度でも引き続き実施し、解析を行う予定である。また、ハナホソガ2種に寄生していたコマユバチについて分子実験を行ったところ、ハナホソガ2種に寄生するコマユバチは1種であり、宿主とするハナホソガによる遺伝的変異は見られなかった。本結果は、次年度でさらなる解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、コロナ禍およびそれに伴う社会的情勢の影響により、計画していた調査地への渡航機会が著しく限られてしまった。特に、虫こぶをつくるハナホソガであるE. corruptrixの主な生息地である南西諸島への渡航が難しく、申請時に計画していた調査を行うことができなかった。そのため、研究対象の2種のハナホソガうち、一方のE. obovatellaのみでしか、累代飼育を試みることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上記理由により進行が遅れているが、次年度実施予定の分子実験を初年度に前倒して開始したため、全体としての研究内容に変更はない。次年度は、引き続き分子実験を行い、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され大学の規定が緩和され次第、初年度に計画していたE. corruptrixのサンプリングおよび室内実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの発生に伴い、当初予定していた調査の大半が実施できなかった。その分、予算執行が予定通りに進まず、次年度使用額が生じた。今後、緊急事態宣言による新型コロナウイルスの収束が見込まれることにより、次年度の研究計画は予定通り進行可能であり、次年度使用額は次年度に執行可能で、大きな支障はなく調査と研究を進められる。
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