研究課題
本研究は、近縁種であるボノボ(Pan paniscus)とチンパンジー(Pan troglodytes)のメスの発達速度の種間差を調査し、メスの出自集団からの分散時期に関与する要因を、各種の社会環境と合わせて検討し、メスの分散戦略の解明を目指した。これまでの成果として、コンゴ民主共和国のルオー保護区に生息する野生のボノボから採取した尿試料を分析して、ボノボのメスの分散時期の背景にある性成熟段階を明らかにした。分散の前段階に、尿中のエストロゲン量の平均値が上昇し、交尾行動が観察されるようになった一方で、黄体期に生じるようなプロゲステロン量の増加は見られず、排卵の証拠は得られなかった。ボノボのメスは思春期の初期段階に出自集団を離れるようだ。さらに、移籍してから1~2年後に、排卵を示唆するホルモン動態がみられ始めたため、分散と性成熟の間には1~2年程度のインターバルがあるといえる。このインターバルに関して、ボノボのメスは初産に掛かるコストを負う前に新たな集団の環境に馴染む、もしくは将来の繁殖成功により良い集団を探索するといった戦略が仮説として考えられる。本研究成果を査読付き英文学術論文1本(受理済み)に発表した。また、2021年度には、コロナ禍の影響で当初の予定より遅れたが、ウガンダ共和国のカリンズ森林に生息する野生チンパンジーの尿試料収集を実施できた(約5カ月間)。しかし、尿中成分の分析は完了しておらず、Pan属2種の発達パターンの比較にはまだ至っていない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Hotmonr & Behavior
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