研究課題/領域番号 |
20K22671
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 江理子 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20626402)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | イネ / DNAメチル化 / トランスポゾン / ゲノム進化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、DNAメチル化に特徴を持つモデル植物イネを用い、DNAメチル化量の違いがトランスポゾンの活性に与える効果と進化(及び栽培化)プロセスを明らかにする事である。主なイネの栽培系統はインディカとジャポニカに大別されるが、ジャポニカのDNAメチル化レベルはインディカよりも60%程度高く、トランスポゾンのコピー数も大きく異なる事から、系統間のエピジェネティックな違いがゲノム環境を変えているとい考えられる。 令和2年度はインディカ、ジャポニカを含む栽培イネ及び祖先系統(36系統)を収集し、栽培環境の構築を行なった。さらに、DNAメチル化シークエンスに加え、国際共同研究(中国)によりRNAシークエンスを実施し、データセットの構築を行なった。並行して実施した既存の遺伝子発現データの解析からは、インディカ種よりもジャポニカ種で高発現している複数のDNAメチル化制御遺伝子が特定されており、これらは、栽培集団間のDNAメチル化レベルの違いを決定している遺伝子座の候補と考えられる。 続いて、国立遺伝学研究所より自生地域が明らかになっている野生イネ110系統を入手して育成し、DNAメチル化シークエンスを行うためのサンプリングを行った。これらのサンプルは、DNAメチル化の系統間の違いを決定する遺伝的基盤を決定するためのゲノムワイド連関解析(GWAS)を行うために利用する計画であり、順次シークエンスの準備を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響による実験の制約と試薬の納期が遅れた事が影響し、当初予定していた110系統のDNAメチル化シークエンスが令和2年度内に完了しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、集団遺伝学の手法を用いて栽培イネ及び祖先系統(36系統)のデータを解析し、栽培種のDNAメチル化のパターンがいつどのように獲得されてきたのか、栽培化におけるエピジェネティクス形質の獲得・喪失や寄与を明らかにする。 さらに、野生イネ110系統についてDNAメチル化シークエンスを完了し、ゲノムワイド連関解析を用いて、エピジェネティックな変異を決定している遺伝的基 盤の解析と栽培化への寄与の詳細解析を行う。 一方で、これまで進めてきたシロイヌナズナのエピジェネティクスの基盤を制御する遺伝子座がトランスポゾンの活性 にダイレクトに関与するという証拠が得られてきており、これらの解析方法や知見が今後の本研究の発展に応用できると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響による試薬の納期遅延や実験の制約によってDNAメチル化シークエンス予定が次年度に繰越になったため差分が生じた。また、当初予定していたRNAシークエンスが共同研究機関の負担で行われたため、これらの費用を次年度のDNAメチル化シークエンスに充当することになった。 令和3年上旬に繰越になった予算と当年の予算を合わせ、計146系統のDNAメチル化シークエンスを実施予定である。
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