研究課題/領域番号 |
20K22671
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 江理子 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20626402)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
|
キーワード | 野生イネ / DNAメチル化 / 栽培化 |
研究実績の概要 |
本研究では、モデル植物イネにおいて、トランスポゾンの活性を調節するゲノム防御システムであるDNAメチル化形質がどのように栽培化に関与したのかという問いに答えるため、イネ野生系統、栽培系統についてDNAメチル化表現型の定量と集団間の比較を行なった。長い栽培化の歴史を持つイネには、遺伝的な多様性に富む共通の祖先野生集団 Oryza rufipogonから派生したジャポニカとインディカという2つの大規模な栽培 集団が存在し、ジャポニカとインディカ間では平均DNAメチル化量に約1.6倍という大きな違いがある他、トランスポゾンの転写活性が異なる事が報告されている(Li et al. 2012, BMC Genomics)。 2020年度に実施した、栽培系統および野生系統を含む24系統のDNAメチル化シークエンスの結果からは、DNAメチル化の種内のバリエーションが自生(栽培)地の環境よりも集団構造を強く反映していることが示唆された。そこで2021年度は、イネ系統間のメチル化量を決定する原因遺伝子座を決定するため、ジャポニカ、インディカおよびこれらの野生系統を含む96系統のイネ実生を対象にゲノムワイドDNAメチル化シークエンスを行い、詳細なデータの取得を行なった。 栽培系統に比べ、野生系統は全般的に高いDNAメチル化レベルを示すという傾向を示す一方で、従来の報告に比べてメチル化のゲノム平均レベルがいずれも低く、組織あるいは生育ステージによる違いが示唆された。さらにイネDNAメチル化変異体のデータを利用して、メチル化のターゲットとなるトランスポゾンを特定し、各系統におけるトランスポゾンのメチル化レベルの評価を行なった。今後は、これらのリソースと量的遺伝学的なアプローチで原因遺伝子座の探索を実施する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響を受け実験環境の立ち上げが遅れたため、大規模なイネ野生集団を用いたゲノムワイド関連解析の計画が遅延した。
|
今後の研究の推進方策 |
共同研究機関が収集を進めている野生イネ集団の高精度ゲノム情報の利用が可能になったことから、これらのデータを用いてゲノムワイド関連解析を実施し、原因遺伝子座の特定を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナによる実験の遅延により、当初予定していたデータ取得および解析に遅れが生じた。このため、2022年に予定していた検証実験および論文出版を繰越し、次年度(2023年度)に実施する予定である。
|