研究実績の概要 |
本研究では、トランスポゾンの活性を調節するゲノム防御システムであるDNAメチル化形質がイネの栽培化においてどのように関与したのかという 問いに答えるため、イネ野生系統、栽培系統を対象にDNAメチル化表現型の定量と集団間の比較を行なった。長い栽培化の歴史を持つイネには、遺伝的な多様性に富む共通の祖先野生集団 Oryza rufipogonから派生したジャポニカとインディカという2つの大規模な栽培集団が存在し、ジャポニカとインディカ間では平均DNAメチル化量に約1.6倍という大きな違いがある他、トランスポゾンの転写活性が異なる事が報告されている (Li et al. 2012, BMC Genomics)。 2022年度までに、ジャポニカ、インディカおよびこれらの野生系統を含む96系統のイネ実生を対象にゲノムワイドDNAメチル化シークエンスを実施し、詳細なデータの取得を行なった。栽培系統に比べ、野生系統は高いDNAメチル化レベルを示すという傾向は変わらない一方で、従来の報告(Li et al. 2013, BMC Genomics)に比べてメチル化のゲノム平均レベルがいずれも低く、組織、生育ステージ、あるいは環境によるメチル化の違いが示唆される結果となった。 一方、2023年度ではイネと並行し自然集団のDNAメチル化データが利用できるシロイヌナズナを対象として広く真核生物に保存されているCGメチル化バリエーションのGWASを行った。その結果、クロマチン制御因子CDCA7の多型をCGメチル化バリエーションの原因遺伝子座として同定し、ゲノム編集を行なった変異体系統を用いて機能検証を進めた。
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