研究実績の概要 |
本研究では,自閉スペクトラム症者(ASD)と定型発達者(TD)の会話時の音韻的階層の特徴を調査した.特に,研究者(定型発達者)が実験参加者(定型発達者や自閉スペクトラム症者)と会話している際の音声を調べた(大黒,熊谷,綾屋,長井, 2020).ベイズ推定に基づく確率的振幅復調を用いて音声波形の振幅変調構造を分析した結果,TD音声とTD指向音声,ASD音声とASD指向音声の発話リズムがそれぞれ類似していることがわかった.この結果から,実験参加者(対話者)の発話特性に気づいた研究者は,自身の発話を,自閉スペクトラム症者を含む対話者の発話特性に似せて会話していることがわかった(Daikoku, Ayaya, Kumagaya, Nagai, under review).当事者研究では,少数派側が多数派の法則性の不一致に気づくことが重要と示されてきた(熊谷, 2020).申請者の研究は,多数派側も少数派の法則性との不一致に「気づく」ことで,自発的に相手の特性に合わせるといった,ある種の当事者化行動を示している.この気づきを促す方法として先行研究では,自己や他者の内受容感覚を理解し「共感」を高めることが大切だと示唆している(Imafuku et al., 2020; Fikushima et al., 2011).これらの結果を受け,本年度,触覚を通して内受容感覚知覚を高めるデバイスを開発した.本成果は英語論文にし,学術誌に投稿し,現在は査読中(minor revision)である.査読中の論文は.プレプリントとしても投稿している(PsyArxiv,10.31234/osf.io/4agcw).
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