研究課題/領域番号 |
20K22679
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
浅井 裕貴 富山大学, 学術研究部医学系, 特命助教 (60883626)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 学習・記憶 / 海馬 / 細胞集団 / クラスター型プロトカドヘリン / cFos / CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
学習・記憶などの高次脳機能を果たすために情報を担う神経細胞集団がクラスター型プロトカドヘリンによって形成された細胞集団であるか明らかにするために、クラスター型プロトカドヘリンの特定のアイソフォームを蛍光標識した遺伝子組換えマウスを用いて神経活動の観察を2種類の実験方法で行っている。 1つ目の観察手法である神経活動マーカーのcFosの免疫組織化学染色実験により、新規空間学習後のcFos発現細胞を学習・記憶形成に重要な脳領域の海馬で定量したところ、クラスタープロトカドヘリンにより形成された細胞集団が神経活動時に使われる可能性を示唆する結果が得られた。 2つ目の観察手法である小型顕微鏡を用いた自由行動下カルシウムイメージング実験では、神経活動の観察と細胞同定のために複数の蛍光観察ができる顕微鏡法を確立しているところである。既に神経活動の観察に成功している。今後、解析手法を詳細に詰めていく。 また、クラスター型プロトカドヘリンの特定のアイソフォームを発現する神経細胞の神経活動を人為的に操作する実験の実施のために、新たな遺伝子組換えマウスをCRISPR/Cas9法を用いて作出した。この遺伝子組換えマウスを用いて、光遺伝学的手法や化学遺伝学的手法により神経活動を人為的に操作することで、「クラスター型プロトカドヘリンにより形成された神経細胞集団が情報処理過程で利用されている」ことの因果関係を確かめる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫組織化学染色実験においてクラスタープロトカドヘリンにより形成された細胞集団が神経活動時に使われる可能性を示唆する結果が得られたため。小型顕微鏡を用いたカルシウムイメージングに関しては、正確な細胞同定のための観察法・解析法の確立が直近の課題であるが、神経活動の観察に成功しているため。「クラスター型プロトカドヘリンにより形成された神経細胞集団が情報処理過程で利用されている」ことの因果関係を確かめるために必要な遺伝子組換えマウスの準備が順調に進んでいるため。
|
今後の研究の推進方策 |
免疫組織化学染色実験により明らかとなったクラスタープロトカドヘリンにより形成された細胞集団が神経活動時に使われる可能性を検証するために、クラスター型プロトカドヘリンの特定のアイソフォームを発現する神経細胞を光遺伝学的手法や化学遺伝学手法で人為的に神経活動を誘導した場合に、その下流領域で同じアイソフォームを発現している神経細胞に活動が誘導されるか観察する。今年度の予備実験の結果を踏まえ、神経活動を誘導する脳領域の変更も視野に入れ、研究を進める。 カルシウムイメージング実験においては、正確な細胞同定のための観察法と画像解析法の確立を行う。実験方法・解析方法の確立したのちに、クラスター型プロトカドヘリン発現細胞の神経活動様式を解析し、クラスター型プロトカドヘリンにより形成された細胞集団が神経活動時に使われるか明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
カルシウムイメージング用の小型顕微鏡などの納品に遅れが生じた。それに伴い、消耗品の購入などが購入も遅らせているために次年度使用額が生じた。使用計画に関しては、変更なく当初の計画のまま使用する予定である。
|