研究課題
中枢神経系の髄鞘(ミエリン)が障害される代表的な神経疾患として多発性硬化症があげられるが、感覚麻痺や運動麻痺を主症状とする難治性疾患である。また、多発性硬化症は再発と寛解を繰り返すことで次第に進行型へと移行し、最終的には自身で歩行することも困難となるが、中枢のミエリン形成細胞であるオリゴデンドロサイトによる再ミエリン化を促進する治療法や細胞保護による脱髄予防法は確立されていない。本研究は研究代表者が開発した内包脱髄モデルマウスを用いて脱髄疾患に対する新たな薬剤評価法を確立させることと多発性硬化症の新規治療候補化合物として、見出したクレアチンの脱髄保護効果を評価することを目的とする。まず、内包脱髄モデルマウスによって、薬剤評価が可能かどうかを調べるために、成熟マウスの内包に脱髄誘導剤であるリゾレシチンを投与し、内包脱髄モデルマウスを作製した。次に、現在再ミエリン化を促進することが明らかになっているクレマスチンをポジティブコントロールとして投与し、運動機能評価と組織解析を行なった。その結果、内包脱髄モデルマウスは組織解析だけでなく、運動機能評価も可能であることを明らかにした (Yamazaki et al., Neurochem Int 2023)。さらに、従来から頻繁に使用されているクプリゾンモデルを用いてクレアチンの脱髄予防効果を検証したところ、クレアチン摂取により、脱髄部位における成熟オリゴデンドロサイトの増加していた。また、電子顕微鏡による解析を行なったところ、クレアチンに脱髄予防効果があることが示された。
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