研究課題/領域番号 |
20K22691
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
長内 康幸 自治医科大学, 医学部, 助教 (90758004)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト / 弱視 / 視覚臨界期 |
研究実績の概要 |
弱視は幼少期に視覚入力が障害され神経回路が異常になることで起こる。申請者は弱視の原因として神経細胞に髄鞘と呼ばれる構造をつくるオリゴデンドロサイトの異常が関わるのではないかと仮説を立てた。オリゴデンドロサイトが形成する髄鞘は神経伝導速度を速める働きがあるので、オリゴデンドロサイトの異常は視覚機能を低下させる可能性がある。本研究において申請者は2種類の弱視モデルマウスを用いてオリゴデンドロサイトの形成する髄鞘の形態を観察した。弱毒化狂犬病ウイルスベクターとAAVと呼ばれるウイルスベクターを用いてオリゴデンドロサイトと神経細胞を可視化することで、申請者は重度の弱視になる単眼遮蔽マウスモデルと軽度の弱視になる両眼遮蔽モデルマウスでは髄鞘の形態が異なることを明らかにした。この結果から髄鞘の形態の差が弱視の重症度を決定する可能性が示された。また申請者はVisual cliffと呼ばれる行動実験を応用して、幼若期の視覚遮断が成獣期以降の視力低下の原因になることを明らかにした。この現象はすでに知られていたが、検証には水迷路を利用した大掛かりな装置が必要であった。申請者が応用したVisual cliffを用いた手法であれば簡便に幼少期の視覚遮断の影響を検証できる。今後の展望として薬剤によりオリゴデンドロサイトの形態を改善した場合に弱視から回復するのかをVisual cliff試験と電気生理実験を用いて検証する。本年度解明した弱視モデルマウスにおけるオリゴデンドロサイトの形態異常が視覚機能と結びつくのか来年度検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的であった弱視になりづらいマウスのオリゴデンドロサイト形態の観察に成功した。弱毒化狂犬病ウイルスによるオリゴデンドロサイト標識法によりオリゴデンドロサイトの形態が単眼閉眼遮蔽マウスと両眼閉眼遮蔽マウスで異なることを明らかにした。また、電子顕微鏡を用いた解析により単眼閉眼遮蔽マウスと両眼遮蔽マウス間に髄鞘の厚みに違いがないことを明らかにした。加えてマウスの視力を簡便に測定できる系の開発に成功した。また、オリゴデンドロサイトの分化を止められるトランスジェニックマウスをオーストラリア・モナッシュ大学より導入した。次年度にはこのマウスを用いてオリゴデンドロサイトと弱視の関係性を解明する。
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今後の研究の推進方策 |
新たに導入したオリゴデンドロサイトの分化を止められるマウスを用いてオリゴデンドロサイトの分化を止めた場合に視覚の可塑性がどのように変化するか検証する。また反対に薬剤を用いてオリゴデンドロサイトの分化を促進した場合に視力回復が見られるかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は電気生理実験と行動実験を行い、オリゴデンドロサイトの分化を止めた場合、または促進した場合でマウスの視力が変化するかを明らかにする。そのためには電気生理に使用する器具と行動実験に使用する消耗品、マウスの維持費などが必要になる。そのため次年度使用額が必要である。
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