研究実績の概要 |
幼若期の視覚遮断が成獣期の視覚に与える影響をマウスを用いて検証した。その結果幼若期の視覚遮断により視神経の髄鞘が太くなるという予想に反する結果が得られた。この知見は活動が活発な神経細胞では髄鞘が太くなるという定説を覆す結果である。一方で髄鞘の長さを測定したところ髄鞘の長さは短くなっていた。以上の結果から幼若期の視覚遮断は成獣期の髄鞘形態に影響を与えることが明らかになった。またこの視覚遮断をしたマウスに対して行動実験を行ったところ、視覚機能には影響がないものの、マウスの行動に異常が見られた。以上の結果から、幼少期の視覚遮断はマウスの視神経の形態や行動に大きな影響を及ぼすことが明らかになった、今後は遺伝学的手法や薬理学的な手法を用いて、視覚遮断によるマウスの視覚機能にとってネガティブな影響を取り除く方法を明らかにしていく。本研究成果はNeurochemical research誌に投稿・リバイス中である。 我々は以前片目を視覚遮断したマウスでは髄鞘が短くなるという現象を報告した(Osanai et al., 2018)。髄鞘が短くなるメカニズムを解明するため、片目を視覚遮断したマウスに比べて、両目の視覚遮断をした場合の髄鞘の長さがどうなるか調べた。その結果、興味深いことに両目を視覚遮断した場合の髄鞘の長さは通常の髄鞘の長さとほぼ同じであった。片目を閉じた場合には髄鞘が短くなることから、髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトは両目からの視覚入力の差分を検出して髄鞘の長さを決めている可能性が示された。今後の研究ではこの現象の細胞レベル・分子レベルのメカニズムを明らかにしていきたい。また軸索や髄鞘の可視化する上で障害になるウイルスベクターのリークが発生するメカニズムを解明・報告した(Osanai et al., BioRxiv, 2022)。
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