新生児低血糖症は、不可逆的な中枢神経障害をきたすうえ、発症が見落とされがちであるため早期発見・治療介入が重要である。切迫早産治療で用いられるリトドリンは、重大な副作用に新生児低血糖症があるが、リスク因子や発症機序は未知である。本研究では、リトドリンの胎盤透過性・胎児蓄積性と新生児低血糖症の因果関係を明らかにするため、臨床に即した動物モデルの作成を行った。リトドリン8mg/kg/dayを7日間持続皮下投与したモデルでは新生児に低血糖症は認められなかったが、16mg/kg/dayを母獣に急速静脈投与したモデルで新生児での有意な低血糖状態が持続した。これらのモデルから胎児期でのリトドリン曝露期間よりも帝王切開時での胎児血漿中リトドリン濃度が高濃度であり、新生児中リトドリン濃度が高推移することで、リトドリンよる新生児低血糖症が発症する可能性が示された。 切迫早産は妊婦の約30%に生じ、早産児は重篤な障害が出現する可能性が高くなるため切迫早産管理は重大な課題である。リトドリンは切迫早産に適応を持つ唯一の薬剤であるが、新生児低血糖症といった重大な副作用を有するため慎重な使用が求められている。本研究は新生児低血糖症発症と新生児血漿中リトドリン濃度との関係性を示したものである。また、本研究では母体と胎児でのリトドリン血漿中濃度比も算出しており、新生児でのリトドリン血漿中濃度予測を行う端緒となる成果を得た。本研究成果は新生児毒性を加味した切迫早産薬物治療の適正化に繋がる。
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