本研究では、遺伝子導入剤を含まないplasmid DNA (naked pDNA)粉末製剤の眼科領域への展開を目指し、非侵襲的な眼局所塗布型pDNA製剤の有用性を証明し製剤設計基盤を構築することを目的としている。昨年度は、様々な調製方法を駆使してnaked pDNA粉末剤を調製した。その結果、いずれの調製方法でもpDNAの分解が一部確認されたものの、液剤よりも長期安定性に優れること、in vitroにおける高い安全性を確認した。本年度は、naked pDNA粉末製剤の有用性実証を目標に、naked pDNA粉末を角膜細胞およびマウス眼瞼へ塗布し、in vitroおよびin vivoにおける遺伝子発現評価を推進した。 ホタルルシフェラーゼをコードするpDNAをモデル薬物に、naked pDNA粉末剤を調製した。調製方法は、凍結乾燥、噴霧凍結乾燥、電界紡糸法を採用した。Naked pDNA粉末剤の遺伝子発現をin vitroにおいて評価するため、角膜細胞が空気と接触した状態の気液界面細胞培養系を用いて眼球表面を再現し、細胞層に各種naked pDNA粉末剤を分散添加した。その結果、in vitroにおいてルシフェラーゼ由来の発光を検出することに成功した。In vivo事件では、各naked pDNA粉末をマウス眼球へ塗布し、ルシフェラーゼ由来の発光を検出することを試みた。しかし、マウス眼部における遺伝子発現を検出することはできなかった。In vivoにおいて遺伝子発現を検出できなかった原因を解明すべく、細胞層を人口涙液で被覆した気液界面細胞培養系へ、naked pDNA粉末を添加した結果、ルシフェラーゼ由来の発光は著しく低下した。以上の結果より、in vivoにおいてnaked pDNA粉末の遺伝子発現を達成するためには、涙液層によるバリアを突破する必要が示唆された。
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