研究課題/領域番号 |
20K22715
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
青木 啓将 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 助教 (70881845)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 腫瘍随伴マクロファージ / 光線力学療法 / 腫瘍内微小環境 / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
【M-chlorine e6の腫瘍集積性および排出性の確認】 Talaporfin sodium、G-chlorine e6およびM-chlorine e6の腫瘍集積性および排出性を光線力学診断 (PDD)により解析したところ、talaporfin sodiumと比較してG-chlorine e6およびM-chlorine e6は腫瘍に選択的に集積することが明らかとなった。また、M-chlorine e6は投与してから30 分後に集積がピークに達する事が明らかとなった。 【光線力学療法 (PDT) 後の腫瘍内微小環境におけるM1-TAMsおよびM2-TAMsの割合の解析】 腫瘍マウスモデルに対して、M-chlorine e6を投与し、PDTを行ったところ、control群と比較してM1-TAMsの割合の増加およびM2-TAMsの割合の減少が見られた。M0-TAMsの割合もM-chlorine e6 PDT後に増加した。M0、M1およびM2を含めたTAMs全体の割合は変化しなかった。また、PDT後の腫瘍組織における細胞障害性T細胞および制御性T細胞の割合を解析したところ、PDT群とcontrol群で差が見られなかった。 【M-chlorine e6 PDTのがん細胞に対する直接効果の検討】 がん細胞 (CT26細胞) に対してM-chlorine e6 PDT処理を行ったところ、M2-TAM減少効果だけでなく、がん細胞に対する直接傷害作用も有する事が明らかとなった。細胞傷害作用はG-chlorine e6 PDTと同程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備実験により、PDTが腫瘍マウスモデルにおける腫瘍組織を縮小させることが明らかとなっていたため、その後の実験計画をスムーズに遂行する事が出来た。また、当初の想定通りにM-chlorine e6 PDTによってM1-TAMsとM2-TAMsの割合に変化が生じたことも研究遂行の一助となった。一方で、細胞傷害性T細胞や制御性T細胞の割合に変化が生じなかったことなど、一部想定と異なる結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究ではM-chlorine e6 PDTが腫瘍内微小環境における免疫細胞に与える影響を解析してきた。今後はがん細胞に対する直接傷害作用が腫瘍免疫にどのような影響を与えるかを解析していく。具体的には、免疫反応の起点となるeat me signalがPDTでどのように変化するかを各種解析で明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
腫瘍マウスモデルを用いた実験に関する解析が順調にいったため、当初の想定よりも購入マウス、試薬購入数が少なかったため、次年度使用額が生じた。今後は主に分子生物学的実験を行っていく予定であり、本研究計画の内容から、細胞培養に使用する器具、培地類、遺伝子やタンパク質発現の解析に使用する分子生物学的実験に使用する試薬の購入が多くなると予想される。従って、次年度使用額はそれらの用途に補填していく予定である。
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