新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の3CLプロテアーゼは、ウイルスの増殖に必須の酵素であることから、有望な創薬ターゲットである。独自開発した3CLプロテアーゼ阻害剤YH-53は、強力な抗SARS-CoV-2活性を示すが、より強力な抗ウイルス活性を示す化合物の創製は必要不可欠である。本研究では、YH-53とE3ユビキチンリガーゼのリガンドを結合したキメラ分子の設計・合成を行い、3CLプロテアーゼのタンパク質分解を誘導可能か検証し、ウイルス由来タンパク質を標的としたプロテインノックダウン法の確立をめざす。 本年度はまず、昨年度合成したキメラ分子の合成ルート最適化を実施し、効率的にキメラ分子の供給を可能にする合成方法の確立に成功した。次に、3CLプロテアーゼを組み込んだ動物細胞用の発現プラスミドを作製し、3CLプロテアーゼのタンパク質分解誘導に向けた細胞評価系の構築を行なった。はじめに、3CLproを効率よく発現できる細胞の探索を行なった。HeLa、HEK293、およびCOS-7細胞に3CLproプラスミドをトランスフェクションし、抗3CLpro抗体にて検出したところ、COS-7細胞で効率よく発現されることが明らかとなった。そこで、COS-7細胞で一過性発現した3CLproに対して、それぞれのキメラ分子による3CLpro分解誘導評価を試みた。その結果、一部のキメラ分子処理によって3CLproの分解が示唆された。次に、化合物濃度、処理時間などの検討を行なったが、再現性よく3CLproの分解を確認することはできなかった。今後、アッセイ条件の最適化などを通して本戦略の有用性を実証していく。
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