アルツハイマー病(AD)の臨床症状はまだないが病理変化が始まっている「プレクリニカル期」において、全身的な脂質代謝の異常に起因する脂肪毒性がミクログリアの活性化や脳内炎症に先駆し、AD発症を誘発するのではないかと考えた。そこで、本年度は肥満や加齢に伴い血中に増加する飽和遊離脂肪酸であるパルミチン酸(PA)を用い、PAによる炎症を惹起する機序を調べ、その炎症を抑制する核内受容体アゴニストを探索することを目的としている。 昨年、先行研究で明らかになったPAによる炎症反応を抑制する核内受容体であるRXRを介した反応の機序を調べる為に、RXRαのノックダウン細胞の樹立を試みたが、50%程度のKD効率をもつ細胞しか得ることができなかった。そこで、本年は更にノックダウン効率の高い細胞を得る為にshRNA導入試薬リポフェクトアミンとshRNAの量を再検討した。リポフェクトアミンの量を固定し、shRNAの量を0.6~2 μgの間で振って細胞に添加したところ、2 μgの条件で最も高い30%程度のKD 効率をもつ細胞を得ることができた。KD樹立の条件検討が非常に難航し、本年はKD細胞の再構築しか進めることができなかった。
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