研究課題/領域番号 |
20K22734
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
横川 文彬 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任助教 (90623645)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 特発性側弯症 / マウス / LAT1 / アミノ酸トランスポーター / 骨密度 / 軟骨 |
研究実績の概要 |
特発性側弯症は、小児期に進行性の側弯を呈する原因不明の疾患であり、病態の解明や新たな治療法の開発に向けこれまで多くの研究が行われてきたが、特発性側弯症のモデル動物作製が難しいことがその障害の一因となってきた。一方、必須アミノ酸のトランスポーターであるL-type amino acid transporter 1(LAT1)を軟骨細胞特異的に不活化させたマウスにおいて、高率に側弯が発生することが確認された。本研究では、このLAT1不活化マウスにおける側弯の発生・進行過程を明らかにするとともに、近年注目されている「骨代謝異常に伴う骨密度低下」と「側弯進行」との関連性について評価した。 LAT1不活化マウス16匹のうち12匹(75%)にCobb角>10度の側弯症を認め、このうちmain thoracicカーブが右凸であったものが6匹、左凸のであったものが6匹であった。残りの4匹(25%)はCobb角<10度で、矢状面の変形のみを呈した。側弯を呈したマウスは、野生型のコントロールマウスと比較し、生後2週目以降の全長、体重が有意に小さく、またCobb角が有意に大きかった。LAT1不活化マウスで先天的な奇形椎を呈したものはなく、また脊柱変形は生後4週までに急速に進行し、生後6週以降は緩やかな進行に留まった。さらに、 LAT1不活化マウスの骨密度は、コントロールマウスに比べて、5週以降で有意に低値であった。 LAT1不活化側弯マウスは、外科的侵襲なく側弯を呈すること、先天的奇形を認めないこと、成長が著しい時期に側弯が進行することなど、特発性側弯症に類似する特徴を多く有しており、良好なモデルマウスであることが示された。また、本マウスにおける骨密度の低下は、急速な側弯の進行後の5週以降に認められたことから、骨密度の低下は側弯症の「原因」ではなく、「結果」であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LAT1不活化マウスにおける①先天的な奇形の有無、②側弯を呈する頻度およびその表現型の特徴、③側弯進行時期の傾向、④骨密度低下の有無およびその発生時期を明らかにした。これらの結果はLAT1不活化マウスが良好な特発性側弯症モデルマウスであることを支持する結果であった。一方骨密度低下と側弯進行の関係性についても、骨密度低値が側弯症の「原因」ではなく、「結果」であることが示唆された。 本研究は第35回日本整形外科学会基礎学術集会における学会発表において最優秀口演賞を受賞し、高い評価を得ることができた。 以上より、本研究はおおむね計画通りに順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
さらに検体数を増やし、これまでに得られた知見の信頼性を高めるとともに、生後10週での屠殺検体のマイクロCTおよび病理評価を追加する。マイクロCTからは骨密度の評価に加えて、骨質の評価や側弯の凹側凸側にわけた評価を実施する予定である。LAT1不活化マウスは軟骨特異的にLAT1を不活化したマウスであり、病理評価では側弯の原因となる現象(例えば軟骨内骨化の阻害など)の有無について評価していく。これらのデータの解析を行い、研究成果を国内外の学会で発表していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度にマイクロCTや病理にかかる費用の予算を計上していたが、これらの支払いが次年度となったため、次年度使用額が発生した。また、参加を予定していた学会がコロナの影響によりweb開催となったため、旅費が不要となった。
|