【目的】当研究グループは、マウスのL-Type amino acid transporter 1(LAT1)を軟骨細胞特異的に不活化することにより、高率に脊柱側弯を呈することを発見した。他方、臨床においては骨代謝異常に伴う骨密度低下が側弯進行の一因であることが示唆されている。そこで今回、本マウス(Lマウス)の側弯進行過程や特徴を評価した上で、側弯と骨代謝・骨密度との関連について検証した。 【方法】Lマウス14匹(L群)、野生型マウス8匹(W群)について経時的に全長、体重、Cobb角、椎体回旋角、骨密度を計測した。さらに10週齢のLマウスと野生型マウスの屠殺検体を用いて、μ-CTで椎骨の骨梁構造を、病理で成長板や骨芽・破骨細胞数を評価した。 【結果】Lマウスは先天的奇形椎は有さず、9匹(64%)はCobb角>10度の側弯を呈し、残りの5匹は矢状面のみの脊柱変形を呈した。経時的な計測においては、W群に比べL群は1週齢から有意にCobb角、椎体回旋角が大きく、これらの脊柱変形は6週齢までに(growth-spurtに伴って)急速に進行し、以降は緩やかな進行に留まった。骨密度は側弯の進行が概ね完了した6週以降にLマウスで低値を示した。μ-CTでは、骨梁幅・数・間隙、TBPf、Fractal、SMIに有意差を認め、Lマウスでは3次元的骨形態も簡素であることが示された。病理学的検討では、破骨細胞数に差はなかったものの、骨芽細胞数はLマウスで有意に低値を示した。また、Lマウスの軟骨成長板は側弯の凹側優位に肥厚していた。 【結論】Lマウスが呈する側弯は、奇形椎を認めず、growth-spurtに伴って三次元的に進行するなど、小児側弯症と類似した特徴を示した。一方、Lマウスでは側弯進行後に骨密度の低下が認められ、骨密度低下が側弯進行の原因ではなく結果であることが示唆された。
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