研究課題/領域番号 |
20K22736
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金橋 徹 京都大学, 医学研究科, 助教 (90875999)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | ヒト胎児 / 拡散テンソル画像 / 腹壁 / 横隔膜 / 形態形成 |
研究実績の概要 |
胚子期や胎児期において、腹側や背側の発生に異常があると、腹壁破裂や横隔膜ヘルニア、二分脊椎等が起こる。上記疾患における胎児超音波診断や新生児に対する外科治療や術式は確立されている一方で、該当部位である腹壁や横隔膜、神経管等といった、いわば体の「隔たり」を構成する部位における正常な形態形成過程については十分に解明されていない。 そこで本研究は、胎児期初期における腹壁、横隔膜の形態形成過程を明らかにするため、島根大学医学部解剖学講座が保有するヒト胎児標本(頭殿長33-87mm)の28例を対象として、7T MRIにてT1強調(T1W)画像、及び拡散テンソル画像(DTI)の撮像を行っている。取得できた18例のT1W画像は、画像解析ソフトAmiraに取り込んだ後、まずは横隔膜の三次元再構成を行って形態観察、計測を行った。DTIは画像解析ソフトFMRIB Software Library、MATLABで画像処理を行った後、DSI studioを用いてFiber trackingを作成して筋線維、膠原線維走行の可視化の検討を行った。 T1W画像の観察から、対象全個体で横隔膜は閉鎖しており、大静脈裂孔、食道裂孔、大動脈裂孔が確認できた。成長に関係なく横隔膜の位置はほぼ同じ高さに位置していたが(Th6-8)、頭殿長70mmまでは横隔膜の右側が左側より高い位置にみられた。頭殿長45mm以降から、腰椎部の右脚と左脚が明瞭に観察された。DTIを用いた検討では、頭殿長45mm以降から胸骨部、肋骨部、腰椎部からの線維走行を明瞭に観察できた。食道裂孔を形成する右脚、左脚からの線維の走行パターンを観察したところ、3種類(左脚からの線維のみ二又分岐、右脚からの線維のみ二又分岐、両脚線維が二又分岐)に分類することができた。 今後はデータ数、解析箇所、DTI解析の検討項目を増やして解析内容を充実させていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象28例中18例のMRI撮像を行うことができた。取得したT1強調画像および拡散テンソル画像データから、横隔膜を抽出し、三次元再構築像及びFiber tracking像を作成できた。
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今後の研究の推進方策 |
未撮像個体の画像データ取得及び、解析箇所、DTI解析の検討項目を増やして解析内容の充実を図る。胸壁、腹壁についても同様に解析を進める。先天性横隔膜ヘルニア、腹壁ヘルニアの好発部位に着目した形態形成の解析も実施する。本研究結果によって、正常なヒト発生についての新たな知見を加え、胎児診断学への応用、治療技術向上への貢献につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
撮像できていない個体分の撮像費があるため。また、COVID-19の蔓延により、旅費等を一部使用できなかったため。
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