研究課題
本研究は、新規RNA修飾機構の鉄代謝において果たす役割の解明を目的としている。本年度は、RNA修飾酵素METTL16を欠損した赤芽球が鉄代謝関連因子の遺伝子発現低下を呈するメカニズムの解析を行った。この結果、METTL16欠損赤芽球においては、赤芽球の遺伝子発現に重要な役割を果たす転写因子GATA1のタンパクレベルでの発現が低下していることを見出した。トランスフェリン受容体(TfR1)をはじめとする鉄代謝関連因子はGATA1やその標的である転写因子KLF1による転写活性化を受けることから、METTL16欠損下におけるGATA1の発現低下が鉄代謝関連遺伝子発現の異常の原因であることが示唆された。次に、GATA1の発現が低下するメカニズムについて解析したところ、METTL16欠損下において、GATA1の分解を誘導することが知られるCaspase-3の活性化がみとめられた。したがって、METTL16欠損下での鉄代謝遺伝子発現異常には、caspase-3-GATA-1を介した制御が関与することが示唆された。次に、METTL16の下流で作用する因子を同定するため、CRISPRiスクリーニングの手法により遺伝学的相互作用解析を行った。この結果、特にMETTL16と強い相互作用を示した遺伝子として核内のRNAエクソソームの構成因子群およびその結合因子MTR4を見出した。これらの因子の欠損下では、METTL16を介したTfR1やKlf1のmRNA発現制御の効果が減弱することが明らかとなった。したがって、MTR4-核内エクソソームがMETTL16を介したmRNA制御にとって重要であることが示唆された。これらの結果より、赤芽球分化・鉄代謝を制御する新規転写後調節機構の一端が明らかとなった。
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Science Signaling
巻: 15 ページ: -
10.1126/scisignal.abm5011
Life Science Alliance
巻: 5 ページ: -
10.26508/lsa.202101067