研究課題
本研究はアキレス腱損傷モデルマウスを用いて,継代数の異なるMSCから回収した細胞外小胞(MSC-EVs)のアキレス腱修復効果の違いとMSC-EVs表面の糖鎖プロファイルを明らかにすることを目的とした. P12 のMSCは,P5の MSCと比較し有意に増殖能が低下しており,SA-βGal陽性細胞の割合や老化マーカー遺伝子の発現が有意に増加していたことから,細胞老化が誘導されていることが示された.このP5 EVsおよびP12 EVsのアキレス腱修復促進効果を検証するため,P5 EVsおよびP12 EVsを培養腱線維芽細胞に添加した際の取り込まれ率,細胞増殖能と遊走能を評価した.その結果,腱線維芽細胞へのEVs取り込み効率はP5 EVs, P12 EVsの間に差がなかったが,P5 EVsを添加した腱線維芽細胞では増殖能および遊走能がP12 EVsに比べて有意に増加した.さらに,アキレス腱損傷モデルマウスを用いた評価を行った.その結果,切離後4週では有意に組織修復スコアが高かった.一方でP12 EVs群は修復組織内の異所性軟骨化や修復組織周辺との癒着を起こす頻度が高かった.電子顕微鏡による解析では,修復組織内のコラーゲン線維径が対照群およびP12 EVsと比較しP5 EVsで有意に太いコラーゲン線維の形成が促進されていた.以上よりP5 MSC-EVsは,老化したP12 MSC-EVsと比較して異所性軟骨化や癒着を抑えた良好なアキレス腱腱修復を促すことが明らかになった.そして、EVsの質を評価するためにレクチンアレーを用いて糖鎖プロファイリングを行った。フコース特異的レクチンであるTJS-Ⅱは,P12 EVと比較してP5 EV表面に有意に高発現していた.つまり,糖鎖を指標としたMSC-EVsの質を評価できる可能性が示唆された.
すべて 2022
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FEBS Lett.
巻: 596(8) ページ: 1047-1058
10.1002/1873-3468.14333.