研究課題/領域番号 |
20K22742
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
杉原 圭 九州大学, 医学研究院, 助教 (80875881)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 形態形成 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
真核細胞の核は,一般的には球状や楕円球状とされている.しかし,自然免疫を担う顆粒球の核は分化・成熟に伴い球状,桿状を経て分葉した構造に変化する.この分葉核形成という特異な形態変化のメカニズムに関わる分子・遺伝子は一部明らかになっているが,形態変化を生じる機構の全容は明らかになっていない.このメカニズムを,数理モデルと生物学的実験を組み合わせて明らかにすることが本研究の目的である. まず,形態変化のメカニズムを予測するために,基礎となる数理モデルの構築を行なった.いくつかのモデル枠組みを予備的に検討し,本現象の再現に最も相応しいと考えられるモデル枠組みを選択した.本研究では,核膜と内部構造をそれぞれ粒子で表すことで構造を模倣する計算論的モデルを用いて検討を進めることにした.このモデル枠組み上で,核表層の物性を考慮し,さらに内部体積が減少したときにどのような形態変化が生じるのかを数値計算によって検討した.この数値計算結果と実際の現象との対応付けを行なうことで,モデルの改善を進めている. また,実験的検証については,HL-60細胞に対しDMSOやレチノイン酸で分化誘導を行うという,好中球分化のin vitroモデルとして広く知られている実験系を用いて形態変化の評価を行った.いずれの誘導法とも核膜の陥入などの形態変化を示すが,生体で見られるような分葉構造形成とは異なる形態変化である可能性が高かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の想定の範囲内の進捗であるため.
|
今後の研究の推進方策 |
数理モデルについては,引き続き粒子法の枠組みで検討を進め,生物学的実験との対応付けを進めていく. 実験系については,倫理審査等の所定の手続きを経て,既存のヒト標本やヒト由来細胞等を用いた観察を行うことを検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により学会等への参加を取りやめたため旅費が不要になった.また,実験に使用する試薬・器具類について当初の想定より効率的な予算執行が可能であった.上記の理由により未使用額が生じた. 次年度使用額は,実験に用いる試薬・器具類の購入,(新型コロナウイルス感染症に関する状況が許せば)学会での成果発表等に伴う旅費等にあてる.
|