研究課題/領域番号 |
20K22743
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森 紀和子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (10880081)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 近視 / オメガ3多価不飽和脂肪酸 / 近視進行抑制 / メタボローム解析 / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
本研究は昨今急増する近視罹患数に対応すべく計画された近視進行予防法の開発の一環である。 オメガ3多価不飽和脂肪酸(omega3-polyunsaturated fatty acid; ω3PUFA)は、様々な疾病予防効果と安全性が証明され製品化に至っているが、近視進行抑制に対する効果については過去に報告はない。過去の様々な研究結果を考慮すると、ω3PUFAにはすでに近視進行抑制効果が実証されている天然色素由来であるクロセチンと同様の機序により、同等の近視抑制効果を持つ確証がある。本研究ではその効果の検証およびメカニズムの解明を行っている。 まず、マウス近視誘導(lens induced myopia; LIM)モデルを用いて、ω3不飽和脂肪酸(PUFA)の近視抑制効果を検証する。マウスを人為的に近視誘導しLIMモデルを作成したのち、ω3PUFAを摂取させて近視が抑制されることを確認する。次に、ω3PUFAを体内で産生することのできる遺伝子改変マウスにω3PUFAを含まない餌を投与することでω3PUFAの近視抑制効果を証明する。続いて、各種マウスの眼球内成分のメタボローム解析を行い有効な脂肪酸分画を同定し、LIMモデルに投与して近視抑制効果を確認することを計画した。その研究実施計画のうち、ω3PUFAを摂取したマウスLIMモデルの近視進行抑制効果を判定し、遺伝子改変マウスを用いてその検証を行った。さらに、ω3PUFAの近視抑制効果を分子生物学的に検証するため、摘出眼球における脂肪酸分画を測定することによりその有効成分の同定を遂行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の具体的研究計画は以下のとおりである。 ①マウスに凹レンズを装着させることで近視誘導を行い、マウスLIMモデルを作成する。さらにマウスLIMモデルにω3PUFAを摂取させ、近視進行抑制効果を判定する。②遺伝子改変マウスを用いてω3PUFAに近視進行抑制効果があるかを検証する。自己体内でω3PUFAを生成可能なFat1トランスジェニックマウス にω3PUFAを含まない餌を投与することで、近視進行が抑制されることを証明する。 ③近視進行抑制に有効な成分の解析をおこなう。上記実験で用いた各種マウスの眼球を摘出し、メタボローム解析を用いて眼球内の成分を測定することにより、近視抑制に寄与した脂肪酸分画を同定する。④メタボローム解析で有効と判定された物質をマウスLIMモデルに与えることによって、近視進行が抑制されるかどうかを検証する。以上より得られた結果を集計し、解析および検証したうえでその成果の発表を行う。 現在のところ、①②まで終了し、③を遂行中である。新型コロナウイルス対策等のため実験の遅れを強いられたが、現在予定された計画の軌道に乗せるべく邁進している。
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今後の研究の推進方策 |
若干の遅れはあるが、概ね研究計画通り遂行されている。したがって今後も研究計画書に従って遂行してゆく。 具体的研究計画の①マウスLIMモデルの作成およびこれを用いたω3PUFAの近視進行抑制効果判定、②遺伝子改変マウスを用いたω3PUFAの近視進行抑制効果の検証およびFat1トランスジェニックマウスを用いたω3PUFAに近視進行抑制効果の検証実験、については完了した。現在③近視進行抑制の有効成分解析、摘出眼球による脂肪酸分画同定(メタボローム解析)、を遂行中であり、順調に経過している。その結果をもって、本年度中には④メタボローム解析で得られた近視抑制効果を持つ脂肪酸のマウスLIMモデルへの投与実験を行い、最終的に近視進行抑制効果の検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行によって行動が制限され、また流通が停滞したことにより、計画の一部に遅延を強いられたため、次年度に持ち越す結果となった。早期に計画の軌道に戻れるようこれまで以上に邁進してゆく。なお、生じた未使用金については、研究計画の残余の部分に充当するが、具体的には上記実験計画の③メタボローム解析および④メタボローム解析で有効と判定された物質投与によるマウスLIMモデルの近視進行抑制実験、における実験試料の購入、解析費用等に使用する予定である。
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