研究実績の概要 |
脳性麻痺は胎児期の著しく発達する脳が侵襲を受け, 生涯にわたり重篤な神経学的後遺症をきたす運動機能障害である。脳性麻痺児の約半数以上を早産児が占め, 早産児の脳性麻痺の主要な原因は脳室周囲白質軟化症(Periventricular leukomalacia; PVL)である。PVLは子宮内感染による過剰な炎症の脳への波及や低酸素虚血による病的ストレスに、早産児脳に特有の白質の脆弱性が相まって生じるとされる。いまだに早産児PVLに対する根本的な治療法はない。 Apoptosis signal-regulating kinase1 (ASK1)は、ストレス応答性MAPKであるc-Jun N-terminal kinase (JNK)およびp38の最上流に位置するMAPKKKであり、多様なストレスにより誘導されるアポトーシスや、炎症性サイトカインの産生を中心とする免疫応答においてJNKおよびp38経路の制御を介して重要な役割を果たす分子である。本研究では、早産児PVL発症におけるASK1の関与について明らかとすることを第一の目的とし、さらにはASK1阻害剤を用いた検討を行い、ASK1活性阻害による早産児PVL発症の抑制と早産児に対する治療の可能性を検討する。 妊娠マウスへのLPS投与により、胎仔および新生仔にオリゴデンドロサイトの障害に代表される白質障害が起こるPVLモデルはすでに確立されており、Mianらの報告にそってC57BL6/J miceにLPSの投与量を変化しながら再現しようとしているが、まだそのモデルの確立ができていない。
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