研究実績の概要 |
近年、脂質異常症ならびに動脈硬化の新たな治療標的として、アンジオポエチン様タンパク質 (ANGPTLs, Angiopoietin-like proteins)ファミリー分子のうち、ANGPTL3,4,5が注目されているが、ANGPTL5は、主要な実験動物であるげっ歯類において、相当する遺伝子が存在しないため、遺伝子を欠損(ノックアウト,KO)した動物が作成できず、ANGPTL5分子の機能解析が十分に進んでいなかった。その問題解決のため、ANGPTL5遺伝子を持つウサギに着目し、ゲノム編集技術(Crispr/Cas9) によりANGPTL5を欠損するKOウサギを開発し、機能解析を行うことを計画した。 当該年度は、ANGPTL5 KOウサギの作成を計画し、ウサギのANGPTL5配列を標的としたSingle guide RNA (sgRNA)のデザイン、候補sgRNAの選抜、受精卵へのCas9蛋白/sgRNA複合体のマイクロインジェクションによる導入と受精卵培養による胚盤胞までの発生を確認した。さらに、遺伝子操作した受精卵の仮親への胚移植も一部実施したが、産仔は得られていない。これにより、ANGPTL5のKOウサギの作製に向けた最初のステップはクリアできた。 今後、新たなプロジェクトで、受精卵の胚移植が引き継がれ、生体を得ることができれば、世界初のANGPTL5 KOウサギの誕生となり、ANGPTL5の機能解析を実現できる強力なツールとなりうる。 ANGPTL5の機能を明らかにできれば、これまでにない新たな脂質異常症・動脈硬化の治療法の開発に繋がることが期待され、社会的意義は大きい。
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