研究課題/領域番号 |
20K22765
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
網岡 尚史 岡山大学, 大学病院, 医員 (50884912)
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研究期間 (年度) |
2023-02-26 – 2025-03-31
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キーワード | IL-6 / 心筋炎 |
研究実績の概要 |
研究代表者網岡は2021年5月から2023年5月まで海外留学していたため、その間研究を中断していた。留学前、網岡は2010年7月から2017年4月まで岡山大学循環器内科で治療を受けた13人の急性心筋炎患者と12人の不整脈患者(コントロール群)のサンプルとデータを分析した。この研究で、急性心筋炎患者の血清IL-6値はコントロール群と比べて有意に高いことが明らかになった。また、急性心筋炎患者の組織に浸潤する炎症細胞でIL-6の発現が免疫染色により確認されたが、コントロール群ではそのような染色は見られなかった。さらに、血清IL-6値は心筋逸脱酵素(CK, CK-MB)と正の相関を示し、心機能とは負の相関があった。心筋炎患者をIL-6値に基づき低IL-6群(n=7)と高IL-6群(n=6)に分けた結果、高IL-6群の患者は重症心不全が多く、集学的な治療を受けている患者も多かった。このことから、IL-6は病理学的、臨床学的にも重症度と相関する重要なマーカーであることが示された(PMID: 33814251)。この研究成果は、2024年3月に日本循環器学会の学術集会シンポジウムで発表され、多くの臨床医に共有された。活発な質疑応答があり、特に研究に組み入れた患者の背景に炎症性の拡張型心筋症などが含まれている可能性を否定できないことがLimitationと考えられること、他の炎症性サイトカインなどについての検討はどうか、などの意見も寄せられた。患者組み入れの定義は病理所見で規定されており、それが「急性心筋炎」である以上、研究としての科学的正当性に問題はないと考えられた。一方でIL-6のみが重要なのか、他の炎症性サイトカインについてはどうなのか、IL-6は心筋炎の重症度の指標にとどまらず、治療標的となり得るのかどうか、などについては更なる研究が必要であり今後の課題であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初打ち立てた研究の目的は概ね達成している。現在は臨床的意義の重要性を再検証している段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
現在は臨床データを用いて他の炎症バイオマーカーと比較したIL-6の有用性について検証している段階にある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究責任者が2023年5月まで留学しており、帰国後速やかに研究を再開できず、今後の研究継続のために一部の助成金が2024年の使用予定となった。
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