研究課題/領域番号 |
20K22774
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
野木森 拓人 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 免疫老化プロジェクト, 特任研究員 (20870653)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | ワクチン / アジュバント / インフルエンザ / 老化 / 記憶B細胞 |
研究実績の概要 |
一般的に高齢者は健康成人と比べて、易感染性やワクチンに対する免疫応答の低下が見られることが知られている。例えばインフルエンザ感染症において、特に高齢者での死亡率が高く、超高齢社会が到来している我が国においてインフルエンザ感染の予防及び治療は重要な課題の一つである。本研究は記憶B細胞を標的とする新規ワクチンアジュバントの開発を目標とし、ひいては記憶免疫応答を活用した全く新しい高齢者にも有効なインフルエンザワクチンの開発を目指すものである。 本年度は新規アジュバント候補を同定するための化合物スクリーニングを行なった。具体的には約10,000化合物から、B細胞由来の細胞株であるRamos細胞を特異的に活性化させる化合物のスクリーニングを行なった。スクリーニングに用いたRamos細胞はNF-kBのシグナルの下流に分泌型アルカリホスファーターゼ遺伝子を搭載したものを使用した。ポジティブコントロールとしてTLR7/8のアゴニストであるR848を使用した。その結果、Ramos細胞を活性化させる化合物を17種類同定した。この17種類について、モノサイト由来のTHP-1細胞を用いたスクリーニング結果と照らし合わせ、THP-1細胞を活性化させないことを確認した。つまり、モノサイトを活性化させず、B細胞を特異的に活性化させると考えられる。現在、ハイスループットスクリーニングから得られた17種類の化合物について、そのB細胞特異的活性化能の再現性を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初の予定通り、本年度は10,000種類の低分子化合物からB細胞を活性化させるアジュバント候補の一次スクリーニングを行なった。スクリーニングより得られた化合物について、モノサイト系のTHP-1細胞に対する影響を検証することで、B細胞を特異的に活性化させることを確認した。結果として、B細胞を特異的に活性化させる化合物を17種類同定した。現在、これら化合物について、再現性の確認を行なっている。またB細胞株に加え、ヒト及びサル由来の末梢血単核細胞 (PBMC)に対する影響を検討している。PBMCを用いる際には、B細胞を特異的に活性化させるか検証するため、その他の免疫担当細胞についても確認する必要がある。そこで、ハイパラメーターフローサイトメーターにより、B細胞を含むPBMC中免疫細胞全体への影響を検証している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、昨年度に引き続き、スクリーニグにより得られた17種の化合物について詳細な解析を行なっていく予定である。具体的には、ヒト及びサルPBMCに化合物を添加し、B細胞の活性化を測定する。その際に炎症に関わる自然免疫細胞の活性化も併せて測定することで、B細胞特異的に活性化させる化合物を選定する。また、in vitroでの検証に加えて、若齢及び高齢ザル3頭ずつにHAスプリットワクチンを単独で初回投与し、数ヶ月後に改めて新規アジュバントを添加したワクチンを接種し、記憶免疫反応活性化能を評価する。HA中和抗体を含む血清中抗体価だけでなく、合わせてPBMCを用いた自然免疫細胞、記憶B細胞の活性化状況を解析する。
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