記憶B細胞の質的、量的変化の誘導を可能とするワクチンアジュバントの開発を通して、記憶免疫応答を活用した全く新しい形での高齢者にも有効なインフルエンザワクチンの開発を目指した。新規アジュバント候補を同定するため、約1万化合物から、B細胞由来の細胞株であるRamos細胞を活性化させる化合物のスクリーニングを行なった。その結果、Ramos細胞を活性化させる化合物を17種類同定した。この17種類について、モノサイト由来のTHP-1細胞を用いたスクリーニング結果と照らし合わせ、B細胞のみを特異的に活性化させる化合物を5種まで絞り込んだ。つまりこれら化合物はモノサイトを活性化させず、B細胞を特異的に活性化させると考えられる。 ヒトB細胞株であるRamos細胞および市販のヒト末梢血単核細胞(PBMCs)を用いて、B細胞特異的に刺激が入るかについて、カルシウムフラックスアッセイによる検討をおこなった。結果として、3個/5個の化合物に関して、B細胞を主に活性化する可能性を見出した。さらにヒトPBMCsに対してB細胞受容体刺激と候補化合物添加をかけあわせた場合、B細胞活性化の相乗効果が見られた。その際、T細胞やモノサイトへの影響は認められなかった。以上の結果から、本研究により見出した化合物はB細胞受容体依存的刺激を補助するアジュバントであることが示唆された。現在、マウスを用いてインフルエンザ抗原を接種したのちの、2回目に抗原を接種する際にアジュバント候補化合物を添加することで抗体産生誘導が増強されるか検証している。
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