研究課題/領域番号 |
20K22786
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
芦田 真士 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (60884202)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 濾胞性T細胞 / 重症筋無力症 / ICOS / PD-1 |
研究実績の概要 |
重症筋無力症(Myasthenia gravis: MG)は、神経筋接合部に対する自己抗体により惹起される自己免疫性疾患である。筋力低下、倦怠感、呼吸・嚥下障害により患者のADLは損なわれる。MG患者の80%にアセチルコリン受容体への自己抗体(抗acethylcholine receptor: AchR抗体)を認める。本研究では、濾胞性T細胞(Follicular helper T cells: Tfh)に着目した。Tfhは近年同定された、ヘルパーT細胞 (Helper T cells: Th)の中でケモカインレセプターであるCXCR5を発現していることを特徴とし、2次リンパ節におけるB細胞の形質細胞への分化、抗体産生を促進する細胞群である。CXCR5陽性のThは末梢血中にも確認でき(circulating Tfh: cTfh)、我々はMGにおいてcTfhの上昇を認めた。 Tfhにおいても、従来Thで分類されてきたTh1、Th2、Th17の特徴をもつ、Tfh1、Tfh2、Tfh17のフェノタイプが存在する。またTfhの表面分子の代表として、ICOS(Inducible T cell co-stimulator)、PD-1 (programmed death 1)、CD40 ligand 等があり、これらの分子はB細胞との相互作用において重要である。我々は、Tfh2、Tfh17の頻度がMGで上昇していることを明らかにした。また重症筋無力症患者において、Tfhの頻度上昇のみならず、表面上のICOS、PD-1の発現が亢進していることを見出した。ICOS高発現TfhとMG重症度指標スコアを解析し、正の相関があることを確認した。抗AchR抗体、末梢血中のplasmablastsよりもMG重症度を反映しており、免疫学的重症度マーカーになる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①重症筋無力症における濾胞性T細胞のフェノタイプと表面抗原の解析、②濾胞性T細胞のサイトカイン産性能を中心としたとしてのin vitro functional assay、③重症筋無力症の重症度、治療反応性と濾胞性T細胞の関連性の解析を目的にあげている。現在①の評価は達成しており、②の解析中である。以上から予定位通りの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、Tfhのサイトカイン産性能について解析を行っている。申請者らは、Th表面のCXCR5を染色しセルソーターを使用することで、Tfhを生細胞のまま分離、in virtoでの刺激実験において、cTfhによるIL-21の産生がMGにおいて亢進していることを確認している(図4)。本研究では、Tfhを分離、代表的なサイトカイン産生について、タンパク質、mRNAレベルで解析を行っていく。 また免疫学的重症度指標としての、Tfhの臨床的妥当性を検討する予定であり、具体的には免疫治療前後でのcTfhの頻度、表面抗原の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行期間が6ヶ月であったことと、予定していた遺伝子解析を次年度に延期したため、配当費用が次年度に繰り越された。リンパ球の遺伝子発現解析、リアルタイムPCR解析への準備費用として使用予定である。
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