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2020 年度 実施状況報告書

自己抗原の異物化を介した腫瘍免疫原性の改善に基づく新規がん免疫療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K22801
研究機関富山大学

研究代表者

薄田 健史  富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (50880689)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2022-03-31
キーワード腫瘍免疫 / HLA / CD8陽性T細胞
研究実績の概要

本研究ではまず、Luciferase 安定発現B16F10メラノーマ細胞(B16F10-Luc2; 低免疫原性)にHLA-B*57:01多型及び2アミノ酸変異の陰性対照であるHLA-B*57:03多型を遺伝子導入し、HLA遺伝子安定発現細胞株(HLA-B*57:01/B16F10-Luc2およびHLA-B*57:03/B16F10-Luc2)を樹立した。
次に、HLA-B*57:01/B16F10-Luc2を皮下移植したC57BL/6Jマウスの担癌モデルに5 mg アバカビル(ABC)またはvehicleを1日1回腹腔内投与したところ、移植10日後までにABC投与群ではvehicle投与群と比較して腫瘍の増大が有意に抑制された。加えて、腫瘍の凍結組織切片を用いた免疫染色により、ABC投与群では腫瘍組織中へのCD8陽性T細胞の浸潤も確認された。さらに、CD8抗体投与によるCD8陽性T細胞除去条件を検討したところ、HLA-B*57:01/B16F10-Luc2担癌マウスにおけるABC投与による抗腫瘍効果がキャンセルされた。一方で、陰性対照であるHLA-B*57:03/B16F10-Luc2及びコントロールB16F10-Luc2胆癌マウスでは、CD8陽性T細胞の浸潤及び腫瘍増大に対するABC投与による影響はいずれも観察されなかった。
これらの結果より、ABCとHLA-B*57:01の相互作用が低免疫原性腫瘍(B16F10メラノーマ)へのCD8陽性T細胞の浸潤を促進し、その結果、CD8陽性T細胞依存的な免疫応答による抗腫瘍効果に繋がることが明らかとなった。すなわち、薬剤誘導性に低免疫原性腫瘍の免疫原性を改善可能となることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画前半の目的である、「ABCとHLA-B*57:01多型との相互作用が実際に抗腫瘍免疫応答を誘導できるか明らかにする」という点を当初の計画通り2020年度で検証することができたため、本研究は計画的かつ順調に進展しているものと判断した。

今後の研究の推進方策

2021年度は研究計後半の目的である、「薬物―HLA相互作用による抗腫瘍免疫応答の誘導が他の薬物とHLA多型との組み合わせに拡張できるか明らかにする」という点を検証するため、、HLA-B*57:01多型以外を対象とした解析を行う。具体的には、抗てんかん薬カルバマゼピン(CBZ)とHLA-B*15:02多型との組み合わせについて同様の手法で検討する。

加えて、ABCとHLA-B*57:01多型の組み合わせについても、ヒトの生理的条件に近い状態で追加検証を実施する。具体的にはHLA-B*57:01/B16F10-Luc2をHLA-B*57:01遺伝子導入マウス(B*57:01-Tg)に担癌し、HLA分子が全身性に発現している環境においてもABC投与による抗腫瘍免疫応答が得られるか確認する。
一方で、HLA-B*57:01多型依存的なABC毒性が正常皮膚組織において好発することが知られているため、ABC投与B*57:01-Tgマウスにおいても副作用として発症することが予想される。そこで、HLA-B*57:01/B16F10-Luc2を担癌したB*57:01-Tgマウスにおいてドラッグ・デリバリー・システム(DDS)活用によりABCの体内動態を制御することで、従来のHLA多型依存的な薬物毒性を減弱した上で有効な抗腫瘍免疫効果が得られるかについても併せて検証する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] HLA transgenic mice: application in reproducing idiosyncratic drug toxicity2020

    • 著者名/発表者名
      Susukida Takeshi、Aoki Shigeki、Shirayanagi Tomohiro、Yamada Yushiro、Kuwahara Saki、Ito Kousei
    • 雑誌名

      Drug Metabolism Reviews

      巻: 52 ページ: 540~567

    • DOI

      10.1080/03602532.2020.1800725

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mechanism-based integrated assay systems for the prediction of drug-induced liver injury2020

    • 著者名/発表者名
      Kawaguchi Moemi、Nukaga Takumi、Sekine Shuichi、Takemura Akinori、Susukida Takeshi、Oeda Shiho、Kodama Atsushi、Hirota Morihiko、Kouzuki Hirokazu、Ito Kousei
    • 雑誌名

      Toxicology and Applied Pharmacology

      巻: 394 ページ: 114958~114958

    • DOI

      10.1016/j.taap.2020.114958

    • 査読あり
  • [学会発表] HLA多型依存的なアバカビル過敏症発症の個人差に対する免疫寛容系の関与2021

    • 著者名/発表者名
      桑原佐季,薄田健史,風岡顯良,青木重樹,伊藤晃成
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] アバカビルによるHLA多型依存的な特異体質毒性の発現への免疫寛容系の関与2020

    • 著者名/発表者名
      桑原佐季,薄田健史,青木重樹,伊藤晃成
    • 学会等名
      第27回日本免疫毒性学会学術年会
  • [学会発表] HLA多型特異的な薬物性の免疫毒性発症に対する免疫寛容系の関与2020

    • 著者名/発表者名
      青木重樹,桑原佐季,薄田健史,伊藤晃成
    • 学会等名
      第47回日本毒性学会学術年会

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公開日: 2021-12-27  

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