研究実績の概要 |
これまで、2系統の骨肉腫患者由来組織同所移植モデルを樹立することができた。また、臨床で広く応用されているマルチキナーゼ阻害薬として、パゾパニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、クリゾチニブ、ソラフェニブを選択し、それらの薬剤とVehicle、骨肉腫第一選択薬のシスプラチンを動物モデルに投与し、観察を行った。スニチニブ群とソラフェニブ群では一方のモデルのみで腫瘍増殖抑制効果を認めた。レゴラフェニブ群では、両方のモデルにおいて、著明な抗腫瘍効果を認め、腫瘍は縮小し、病理学的な解析で腫瘍の完全壊死を認めた。 以上より、マルチキナーゼ阻害薬の中でレゴラフェニブが骨肉腫に対し有効であると考え、治療終了後のマウスの腫瘍を切除し、病理学的な評価を行った。レゴラフェニブの腫瘍増殖抑制効果を検討するために、Ki-67腫瘍増殖マーカーによる免疫染色を行ったが、コントロール群においても、染色を確認することができず、解析不能であった。また腫瘍の壊死を評価するためにTUNEL染色を行ったが、コントロール群、治療群ともに非特異的な発色が多く、評価は困難であった。したがって、病理学的な評価はHE染色のみとなったが、HEにおいても腫瘍の壊死は十分に観察でき、レゴラフェニブ投与群で広範な壊死を認め、それ以上の病理学的評価は行わなかった。 続いて、レゴラフェニブのin vitroの効果を解析するために骨肉腫細胞株143Bに対し、0.1, 1, 2, 5, 10μMのレゴラフェニブを投与したところ、5μM以上で腫瘍の増殖が有意に減少した。ただし、いずれの濃度においても、結果に大きなばらつきを認めた。薬剤の溶解が十分ではない場合があることが原因と考えている。さらに、レゴラフェニブの標的因子(VEGF, PDGFRなど)の発現について、ウェスタンブロッティングにより、解析を行っている。
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