研究課題
本研究は、未だ明らかにされていないがん細胞由来細胞外小胞の多様性と、臨床応用へ向けた特性を明らかにすることを目的とする。あらゆる生細胞が恒常的に放出する、エクソソームをはじめとした細胞外小胞(Extracellular Vesicle: EV)は、過去10年程で世界的に研究が進み、研究領域としての地位を確固たるものとした。しかし、EV研究はその定義や取扱いが未だ議論の的になるほど発展途上であり、昨今でもそのアップデートが進んでいる。とりわけがん領域においては、ヒト体液サンプルを活用した研究が重要となるが、体液中EVの機能や臨床応用の可能性など、未だ明確な回答に辿りついたものはほぼ存在しない。本研究では、予後不良の卵巣がんを対象とし、血液、腹水、腫瘍組織等を用いて、EV抽出方法の検討、EV表面タンパク質のプロテオーム解析、EV関連核酸(RNAおよびDNA)の次世代シーケンスによる解析等を行うことで、臨床検体ベースの取り扱いの最適化、および特異マーカーの同定を行う。本年度は研究室の設営などを通して、必要な実験フローの整備を行った。また、種々の方法、種々の試料からエクソソーム、細胞外小胞を抽出し、タンパク質、核酸の抽出行いそのプロファイルを取得した。エクソソームを始めとしたいわゆるSmall-EVのみではなく、サイズの大きいLarge-EVの回収も同一検体より行い、その変化を検証した。もとより解析プラットフォームを有するシーケンサーは利用しており、種々の知見が得られている。EVの抽出に関連して、ナノテクノロジーの応用にも挑戦している。2021年度はこれまでのデータを基盤にその意義を深め、成果へとつなげる。
2: おおむね順調に進展している
2020年度はラボの設営という重要なステップがあったため、2021年度はより成果へつながる研究が展開できると考える。
本研究に変更はなく、それを妨げる課題は現時点では特にない。予定通り、現在行っている患者体EVによるオミックス解析を継続する。本研究において主に対象とする卵巣がんは、極めて悪性度の高いがんであり、患者予後が悪く、サブタイプ等の多様性から、臨床に還元できる研究成果が得られにくいがん種である。しかし、その反面、臨床応用を目指した基礎的研究を行う意義は高いと言える。本研究は、需要の極めて高い、エクソソーム研究、卵巣がん研究の双方の発展に寄与する極めて重要な位置づけとなる。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
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