本研究は、未だ明らかにされていないがん細胞由来細胞外小胞の多様性と、臨床応用へ向けた特性を明らかにすることを目的とする。あらゆる生細胞が恒常的に放出する、エクソソームをはじめとした細胞外小胞(Extracellular Vesicle: EV)は、過去10年程で世界的に研究が進み、研究領域としての地位を確固たるものとした。しかし、EV研究はその定義や取扱いが未だ議論の的になるほど発展途上であり、昨今でもそのアップデートが進んでいる。とりわけがん領域においては、ヒト体液サンプルを活用した研究が重要となるが、体液中EVの機能や臨床応用の可能性など、未だ明確な回答に辿りついたものはほぼ存在しない。本研究では、予後不良の卵巣がんを対象とし、血液、腹水、腫瘍組織等を用いて、EV抽出方法の検討、EV表面タンパク質のプロテオーム解析、EV関連核酸(RNAおよびDNA)の次世代シーケンスによる解析等を行うことで、臨床検体ベースの取り扱いの最適化、および特異マーカーの同定を行う。本年度は研究室の設営などを通して、必要な実験フローの整備を行った。また、種々の方法、種々の試料からエクソソーム、細胞外小胞を抽出し、タンパク質、核酸の抽出行い、そのプロファイルを取得した。エクソソームを始めとしたいわゆるSmall-EVのみではなく、サイズの大きいLarge-EVの回収も同一検体より行い、その変化を検証した。もとより解析プラットフォームを有するシーケンサーは利用しており、種々の知見が得られている。EVの抽出に関連して、ナノテクノロジーの応用にも挑戦している。
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