研究実績の概要 |
大腸癌は癌死亡原因の上位を占める。大腸癌は肝臓に転移しやすく、患者の予後を向上させる上で、大腸癌肝転移のメカニズムの解明とその制御は極めて重要な課題である。大腸癌の進展メカニズムの1つとして、腫瘍とその周囲に存在する間質細胞がネットワー クを構築し、腫瘍の生存、進展に有利な環境を形成していることがわかってきた。これまで自然肝転移をきたすマウスモデルは複数報告されているものの転移効率は非常に低いものであった。本研究は転移効率の高い自然肝転移マウスモデルを確立し、特に転移巣周囲の微小環境の特性に注目して大腸癌肝転移の分子機構を解明することを目的としたものである。研究の方法は、まず数種類のマウスを交配することによって、大腸癌で報告されている遺伝子異常を有する遺伝子改変マウスを作成する。次に遺伝子改変マウスの自然肝転移の有無とその頻度を確認し、原発巣、転移巣のサンプルを用いて腫瘍の微小環境の特性について解析する。本研究により、肝転移治療のターゲットを同定し、大腸癌肝転移患者へ応用が利く治療を開発するための基盤を確固たるものとする。 今年度、我々は大腸癌の進展に関わるKras, Pten, p53遺伝子変異を有する遺伝子改変マウスを京都大学消化器内科教室から譲り受けSPF化を行った。現在は目的とする遺伝子変異を有するマウスコロニー作成の途中段階にあり、マウスの交配を進めている。また、Kras,Pten遺伝子変異を有するマウスにおいて腸上皮由来の肝転移が形成されることを既に確認しており、本マウスから得られた原発巣、転移巣のサンプルを用いて腫瘍の微小環境の構築に関わると考えられる因子の発現を比較した。現時点で原発巣に比べて肝転移巣においてサイトカインCsf3の発現が亢進していることを確認している。
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