研究課題/領域番号 |
20K22818
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
武居 晋 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (30883425)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 膵癌 / 免疫微小環境 / 膵癌自然発癌モデル / scRNA-seq / CAF |
研究実績の概要 |
膵癌は予後不良な消化器癌の一つであり、近年目覚ましい発展を見せている免疫チェックポイント阻害薬も膵癌においては有効性が示されておらず、高度な不均一性を有する膵癌の免疫回避機構の解明が急務である。本研究は、膵癌自然発癌モデル由来膵癌細胞を同所移植することで抗腫瘍免疫を含めた微小環境再現モデルを作成し、腫瘍形成初期過程から腫瘍増大に伴う腫瘍微小環境内の経時的変化を腫瘍組織のscRNA-seq解析を用いて明らかにし、膵癌細胞の免疫逃避機構に関わる新たな細胞集団を同定しそれらを制御する新規治療法を確立することを目的に開始された。 本年度は、既に当研究室で作成している膵癌自然発癌モデル由来の膵癌細胞を用いてC56BL/6マウスに同所移植を行い、腫瘍免疫を含む膵癌微小環境再現モデルを作成した。まず膵癌細胞をマウスへ同所移植を行い、形成された膵腫瘍を単一細胞化しフローサイトメトリーを行うと、CD4陽性Tリンパ球、CD8陽性Tリンパ球、マクロファージなどの既存の免疫細胞が同定された。さらに、膵癌においては癌関連線維芽細胞(CAF)といった間質細胞が免疫細胞と複雑なクロストークを形成することで免疫微小環境に大きく影響していることが示唆されているため、より詳細な膵癌微小環境を解析するために膵癌細胞とCAFを共移植したマウスと、膵癌細胞のみを移植したマウスで形成された膵腫瘍を再度フローサイトメトリ―で比較した。すると全細胞中の樹状細胞の割合がCAFとともに共移植したマウスでより多く検出され、CAFの存在により膵癌の微小免疫環境内では樹状細胞による抗原提示能が亢進している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究室ですでに作成している膵癌自然発癌モデル由来の膵癌細胞を用いてC56BL/6マウスへ同所移植を行いフローサイトメトリ―で免疫微小環境を確認できた。またCAFの有無に伴い、腫瘍微小環境内の樹状細胞数が変動していることが判明しCAFの存在下では樹状細胞による抗原提示能が亢進している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
同様のマウスモデルを再度作成し、時系列の違い、浸潤の程度や転移の有無などに着目し免疫微小環境の詳細な評価を行う。さらに腫瘍組織切片の病理学的な評価を検討し免疫細胞の分布や、免疫環境の変動を観察する。 そこで得られた新たな知見をふまえ、経時的に採取した検体を用いてscRNA-seq dataを作成する。それらのNGS解析を行い免疫微小環境を変動させる因子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展しており、ほぼ予定通りに使用できた。 次年度はさらに詳細に検討する予定でマウス費、scRNA受託解析などに使用する予定である。
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