研究課題
膵癌は予後不良な消化器癌の一つであり、近年目覚ましい発展を見せている免疫チェックポイント阻害薬も膵癌においては有効性が示されておらず、膵癌の免疫回避機構の解明が急務である。本研究は、膵癌自然発癌モデル由来膵癌細胞を同所移植することで作成した膵癌微小環境再現モデルを用いて、膵癌細胞の免疫逃避機構に重要な役割を果たす細胞集団を同定し、それらを制御する新規治療法を確立することを目的とした。まず、膵癌自然発癌モデル由来の膵癌細胞を用いてC56BL/6マウスに同所移植を行い、膵癌微小環境再現モデルを作成した。次に、癌関連繊維芽細胞 (CAF)が免疫抑制性微小環境を構築しているという所属研究室のこれまでの知見から、膵癌とCAFの相互作用を明らかにすることを目的とし、プロリンイソメラーゼであるPin1分子に着目した。Pin1は膵癌細胞とCAFで過剰発現しており、Pin1に対する標的治療によって免疫抑制性微小環境をリモデリングできることを膵癌微小環境再現モデルで示した。scRNA-seqによる膵癌免疫微小環境を評価する前に、まず同じ消化器癌であるヒト胃癌で免疫抑制性微小環境を評価したところ、骨髄系細胞の免疫抑制関連遺伝子の発現が他の免疫抑制細胞よりも高値であった。以上から、消化器癌の免疫逃避機構に骨髄系細胞が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。今後、scRNA-seqを用いてヒト・マウス膵癌微小環境を解明する予定である。
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Cancer Letters
巻: 512 ページ: 15~27
10.1016/j.canlet.2021.04.013