研究課題/領域番号 |
20K22820
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
谷村 恵子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10768807)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | ALK阻害薬 / HER3 / Drug tolerant / 非小細胞肺がん |
研究実績の概要 |
ドライバー遺伝子異常を有する肺がんの耐性克服の方法として、治療抵抗性細胞をターゲットとした治療介入の可能性が指摘されている。今回我々は、ALK融合遺伝子陽性肺がんにおける治療抵抗性の機構を解明すべく、実験を行った。 我々の保有するALK肺がん細胞株を、高濃度のALK阻害薬に曝露させ、生存した治療抵抗性細胞の蛋白発現レベルを評価したところ、治療前の親株と比較して、HER3シグナルの活性化が確認された。この治療抵抗性細胞はALK阻害薬への感受性が低下していたが、HER3の遺伝子抑制やHERファミリー阻害薬:アファチニブによって細胞増殖が抑制された。また、ALK阻害薬とアファチニブを治療初期から併用することで、ALK阻害薬単剤と比較し治療抵抗性細胞の生存を抑制し、抗腫瘍効果を増強できることが、in vitro実験で示された。 この結果を受け、CDXモデルによるin vivo実験を行ったところ、ALK阻害薬単剤ではいったん縮小した腫瘍が長期間の治療によって再増大したのに対し、ALK阻害薬とアファチニブの併用で、奏効が長期間維持された。この結果から、ALK阻害薬の治療下で生存した治療抵抗性細胞から、不可逆的な耐性獲得へと進展するが、治療の初期段階からバイパスシグナルをターゲットとした治療を併用することで、治療効果を増強し、耐性獲得をも防ぎうることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALK肺がんにおける治療抵抗性機構としてHER3シグナルが重要であること、HERファミリー阻害薬をALK阻害薬に併用することで初期治療抵抗性を克服しうることがin vitro 、in vivo実験で示されており、当初の予定通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果から、次年度ではHER3シグナル活性化の機序についての詳細なメカニズム解明、また、臨床検体を用いてバイオマーカーの検討についても進めていく予定である。
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