近年、次世代シーケンサーに代表される解析技術の進歩により、がんを構成する細胞集団の不均一性やその分子生物学的および分子遺伝学的意義が次々に明らかになりつつある。本研究は、空間的あるいは組織形態学的に不均一なサンプルを用いて網羅的メチル化解析を行うことで、膵癌の腫瘍内におけるエピゲノムの不均一性を明らかにすることを目的とした。杏林大学の膵癌外科手術材料を系統的にレビューすることで、組織形態学的に多彩な像を呈する6症例を選定し、各症例5-8領域の複数領域サンプルを用いてInfinium MethylationEPIC BeadChip kit(Illumina社)による網羅的メチル化解析を行った。変動メチル化領域を用いたクラスタリング解析の結果、腫瘍全体として特徴的なメチル化プロファイルを示す症例がある一方で、腫瘍内にメチル化プロファイルの不均一性が見られる症例も見られた。共同研究先であるメモリアル・スロンケタリングがんセンターでも同様の結果が示唆されており、これらの結果からは、膵癌においてDNAメチル化不均一性の高い腫瘍と低い腫瘍の存在があると推定された。今後は、継続してその分子遺伝学的意義について解析、探索する計画である。
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